ナイフを持って震える私に
「怒った顔もいいねぇ」
なんて呑気に笑ってる。
「本気だよ!」
そう言って自分の首にナイフを押し付ける。
こんな安物のナイフで首なんて切れるわけないし、彼に向けたところで傷一つ付けられないだろう。
そんなこと言われなくても分かっていたが、私のメンタルは既に限界だ。
「怒っても泣いても可愛らしいのは変わらないんだけどさ、やっぱりお前は笑っててほしいんだよな」
いつになく真面目なトーンで彼が微笑んだ。
優しい彼が大好きだ。
つい彼に夢中になってナイフを握る力が緩む。
彼の長い指先がナイフに触れて、あっという間に消え去った。
どうすること出来ず、舌を伸ばした。
歯を立てようとした所で、彼の指が口の中に突っ込まれた。
嗚咽が出て苦しい。
指を噛みちぎろうにも、上手く力が入らない。
涙目で見た彼の表情に、ゾッとした。
「誰に誑かされた?お前はこんなことする人間じゃないだろ?」