彼がネクタイを付けない理由

「やぁ、爆豪少年。男の身だしなみと言えばネクタイだよね。君は付けないのかい?」

「あ?どうせヒーロースーツなり体操着なり着替えんだ。そこまで必要じゃねぇだろ」

「ゔ、ぅん。そうだけどネクタイ着用は規則だろ?男ならちゃんと守ろうぜ!」

彼らの会話を遠目で見ていた上鳴と瀬呂。

「オールマイトのお願いなのにあそこまで拒否する爆豪珍しくね?」

「確かに。この間も相澤先生に注意されてたろ」

「だろ?変なの。……緑谷ぁ、かっちゃんって昔からあぁなの?」

指さした先には、未だオールマイトに説得されている爆豪の姿。

「中学の制服は学ランだったから関係ないけど。確かかっちゃんのネクタイってあの子が付けてるんじゃなかっ」

「ヺイ!クソデク余計なこと言ってんじゃねぇ!!」

「ご、ごめっ」

「ハイーちょっとタンマ。その話詳しく、緑谷。瀬呂かっちゃん捕獲」

「任せろ」

「っおい!しょうゆ顔てめっ!ん゙ーーー!!」

「それで?緑谷、あの子って!?ネクタイがなんだよ」

「あ、うん。インスタでね、上がってて」

暴れる爆豪に怯えながら緑谷が差し出したスマホに映ったのは、赤いネクタイをする女の子だった。

「ななななにこの子ちょー可愛くねぇ!?」

「俺にも見せろって」

「他にもなんかねぇの!?」

「僕はインスタしか繋がってないから」

「なら……かっちゃんスマホ見せろ!!」

あっという間に没収されてしまった爆豪のスマホ。
慣れた手つきで指紋認証を済ませ、ロックを解除する上鳴の姿に若干周りの者は固まった。

「……お前慣れてんな」

「はぁ!?今はそれどころじゃないだろ?!あのかっちゃんに女の影!!」


相変わらず暴れる爆豪に、瀬呂のテープもギチギチと音を立て始めている。

「お!LINE発見!!」




「なん!だよ!これぇぇぇぇ!!!」

ビリッビリッ!

上鳴と雄叫びと同時にテープがちぎれる音。
恐る恐る振り向けば、般若の顔した爆豪。
両手からは激しく爆発が起こり、青ざめる上鳴、瀬呂、緑谷ほか数名。

「覚悟は出来てンのか、あ゙ぁ!?」

「ちょ!タンマ!ほんの出来心だってば!な?落ち着こうぜかっちゃ!」

「うるせぇー!!!」

ブーブーブー

「噂をすれば!ほら!電話!!」

激怒した爆豪の目の前に、着信を知らせたスマホを差し出した。
スマホを乱暴に奪い取ると耳にかざした。

「…おぉ……ん、今行く」

激怒していた爆豪はどこへやら。
校門の前に立つ彼女の元へ向かう姿を、教室の窓から覗き込む上鳴達。

「…俺、明日休むは。かっちゃんに殺されたくない」

「…俺も」

「……ぼ、僕も」