私の好きな彼女は、彼のモノ

ドアが閉まる音で目が覚めた。
何時間経ったのだろう…
いつものように乱暴に抱かれ、気がつけば意識を失っていたらしい。

「ッ!!」

起き上がると痛みが全身を駆け巡った。
殴られ、縛り上げられ、青い炎に包まれた傷が手首と腹、そして背中に広がる。
力を入れた下腹部から、ゴポリと生暖かい液体が溢れ出した。
何度経験してもこの瞬間だけは慣れない。
性処理の為だけに生きてきた事実を、身をもって感じてしまう。
涙はとっくの昔に枯れてしまったし、自害しようなんて気もさらさらない。
きっと彼のことだから、地獄まで追いかけてくるに違いない。

重たい体を引きずってシャワールームまで歩いた。
鏡の前に佇む姿を見て、苦笑いが零れる。
また一段と醜い姿になったもんだ。
痩せぼそった体に、傷だらけの肌。
栄養が行き渡っていない髪の毛に、陥没したような目元。
鏡に映ったお化けは、紛れもない私だった。


控えめに捻ったシャワーが、頭のてっぺんから徐々に私を濡らした。
滴るだけで走る激痛に顔を歪ませる。

「っ、はぁ…」

「ナマエちゃん…」

「トガ、ちゃん…?」

すりガラスの向こうで、大好きな彼女のシルエットが映る。

「入ってもいいですか?」

「!?」

私の静止を聞かずに、ガラスの向こうでは服の摺れる音がする。
こんな姿見られたくない。
酷く醜い姿を彼女がみたら幻滅するだろう。
彼にいいように扱われる女だと知ったら、彼女はどう思うだろう。

「ま、って……!ダメなの、開けないで……!」

震える手でドアノブを抑える。
これから起こる絶望に歪む視界。

「……怖がらないで大丈夫です。どんな姿でも、ナマエちゃんは綺麗です」

すりガラスにピタリとくっつく彼女の手のひら。
それに重なるように私も手のひらをくっつけた。

「ナマエちゃん…入ってもいい?」

「……うん」

強く握ったドアノブを離すと、後ろに下がった。
カチャリと音を立ててゆっくり回るドアノブに息を飲んだ。
開いたドアの先に立つのは、同じように裸の彼女だった。

「……綺麗です」

「っ、うそ……汚い、よ……!」

顔を隠すように両手で覆えば、我慢してた涙が一気に溢れ出した。
ふわりと彼女の匂いがして、気づけば抱きしめられていた。

「きらい、に、ならないで……っ」

「なるわけないじゃないですか!本当に綺麗です…大好きです」

私の両手をそっと掴むと、目線を合わせるように覗き込んだ。
頬を赤らめ微笑む彼女と目が合えば、蜂蜜のような甘ったるい瞳が私を捉える。
そのまま両頬を包み込むと、優しく口付けた。
触れるだけの可愛らしい唇が、ゆっくりと離れる。

「ずっとこうして触れたかったんです……荼毘くんがなかなか離さないから」

彼の名前を聞いて一気に体が強ばった。
それに気づいた彼女が、宥めるように背中に手を回した。
痛みにビクリと肩を震わせれば、眉を下げて心配そうに見つめた。

「痛い、ですか……?」

「んっ……だい、じょうぶ」

「後で薬塗りましょうね」

そう言って撫でる指先が、傷を這う。

「っふ……ハァ……っ」

「悔しいけど、ずるいです荼毘くん……こんなに綺麗なんだもん」

彼の付けた火傷一つ一つを撫で、時折キスを落としていく。
その度に感じたことない感覚に襲われ、痛みとは違うソレに全身が痺れる。
ウエストラインをなぞった指先が、太ももの内側を撫でる。

「ト、ガちゃ……っ」

「ヒミコって呼んでください……ナマエちゃん」

「ヒミ、コ……ちゃ、んぁっ!」

彼女の細い指が、私の中に入っていく。
内側を擦る度に蜜が溢れ出して、彼に出された液体が絞り出されていく。

「ひゃっ、あぁっ……き、たないからぁ」

「汚くないです、ナマエちゃんのだったら全部綺麗です」

呪文のように繰り返されるその台詞に、頭の中まで侵されていく。
ガクガクと震え出す太ももに、そろそろ限界が近い。

「ナマエちゃん、チュウチュウしていいですか?」

滑らかな動く指が速度を増す。
コクコクと何度も首を縦に振れば、彼女の可愛らしい八重歯が私の肩に食いついた。

「ん゙んっ、〜〜っ!!」

噛み付いた肩から全身の血液が絞られるような。
そんな感覚の中、達した私は意識を手放した。



目を開けると、見慣れない部屋が広がる。
起き上がると手首に巻かれた包帯が目に入った。
よく見れば他にも治療されたであろう箇所に、彼女を思い出した。

「起きましたか!どうですか、具合は」

嬉しそうに目を細める彼女はいつもと変わらない。
先程の光景は夢だったのかと、意識してしまった事に恥ずかしさを感じた。

「夢じゃないですよ」

耳元でそう囁く彼女が、耳の穴に舌をねじ込んだ。
それだけで下半身がドクンと脈打ち、熱くなった。

「また一緒にお風呂入りましょうね」

そう彼女が言うから、私も黙って頷いた。