彼女と喧嘩した。
謝らなきゃと言う気持ちとは裏腹に、悔しくて私の方が傷ついているという気持ちが勝った。
イライラしつつも、彼女は今どうしているだろうかと頭を埋め尽くすのは、やっぱり仲直りしたいからだろう。
「ナマエッ!」
スピナーの声が後ろから聞こえた頃には遅かった。
油断した私は仲間の攻撃に巻き込まれてしまった。
全治2ヶ月の傷を覆った私を見て、誰も責めることをしなかった。
包帯から覗いた片目で仲間を見れば、みんな顔を顰めた。
歩くことも、起き上がることさえ出来なくて、ただただ汚いベッドに横たわってるだけだった。
一日に数回、仲間達が様子を見に来ては私の身の回りの世話をしてくれた。
確か最初に来てくれたのはスピナーで、その後ミスターにマグ姉。
黒霧さんが来ることもあったし、トゥワイスが来た時は4人の彼がみんなで包帯を変えてくれた。
死柄木と荼毘はドアを開けたほんの少しの隙間から様子を見るだけで、特に声をかけることもなく去っていった。
それが彼ららしくて、それだけで安心できた。
その間、トガちゃんは1度も訪れなかった。
「だいぶ良くなって来たんじゃねぇか?ほら、これ薬な」
そう言って私の包帯を替え終わると、口元に薬を差し出したのはミスター。
さすが大人。
一切の躊躇いもなく手際が良いせいか、痛みは最小限だ。
ゴクリと薬が喉を通っていく感覚に、顎をクイッと上げて飲み込んだ。
残りのコップの水も飲み干せば、彼に手渡した。
「ねぇ、ミスター」
「ん?」
「私ね、トガちゃんと喧嘩したの」
「…あー・・・そっか」
「知ってたの?」
「いや何となくね。そうじゃねぇかなと思ってた」
こちらを見ない彼は、会話をしながら使用済みの包帯やら消毒液やらを手際よく片付けていく。
「酷いこと、たくさん言っちゃったの…。思ってないことばっかり」
「……。」
「なのに私、自分だけ傷ついたみたいな顔して。被害者ずらして、結局油断してこんな怪我…」
「、しょうがねぇだろ?色んなことが重なっちまっただけだって」
「ごめんね……トガちゃん」
「……それは俺に言うことじゃねぇだろ?」
「うん、だからトガちゃんに言ってるの」
「……。」
「どんな思いで、みんなに頭下げたの……?どんな気持ちで今隣にいるの……?私なんかの為に、みんなの血貰うの大変だったでしょう?」
「ッ、!」
バッと私の方を振り向くと、ドロドロとミスターの容姿は溶け始めた。
ゆっくりと頬から流れる泥のようなソレから、彼女瞳が覗く。
酷く怯え、酷く驚くその瞳が私を見つめる。
「ど、どうして……?」
「わかるよ、大好きな人の匂いだもん。どんな姿になっても、トガちゃんだってすぐ分かったよ」
すっかり容姿が溶け落ちたトガちゃんは、素っ裸のまま大きな声をあげて泣いた。
ごめんなさい、と何度も繰り返す彼女を見て、私も子供のようにわんわんと泣いてしまった。
「“私なんか”なんて言わないでくださいッ。私は貴女の為だから何でもするんですッ!」
声を張り上げた彼女を見て、心臓の奥がギュッと苦しくなった。
まだ痛む包帯だらけの腕を彼女の背中に回して、そのまま倒れ込むようにベッドに引き込んだ。
「ッいてて、」
「だ!大丈夫ですか!」
「大丈夫〜。トガちゃんと仲直り出来たんだもん、こんな痛み我慢できるよ」
「〜ッ。ナマエチャン、大好きなのです!」
「うん。私もだーいすき」