缶コーヒーとヘタレ

真冬のパトロール中。
両手を摩る彼女は鼻先まで赤い。

「トナカイみたいっすね」

バカにされた彼女が、俺を見て嫌そうにため息をついた。

「気が利かない男。暖かいコーヒーでも買ってきてくれればいいのに」

やり返しのつもりだろうが、そんな彼女の悪態でさえ愛おしいと思ってしまう。
それが俺だけに向けられているものなら、文句だろうが嫌味だろうが構わない。

「そんな貴女に差し入れです」

そう言って彼女の目の前に差し出したのは、1本の缶コーヒー。
一瞬止まった彼女が、みるみるうちに嬉しそうな表情に変わっていく。
こうしてコロコロ変わる表情が好きなんだと、目を細めて見つめる。

「ありがと、……冷たァ!!」

彼女が缶コーヒーを手に取って叫ぶ。

「嘘でしょ!サイテー!」

「っははは、本当良い反応しますね」

「アンタを一瞬でも信じた私が馬鹿だった!こんな冷たいコーヒー要らない!」

「えぇ、貴女の為に買ってきたのに。俺甘ったるいのしか飲めないんで貰ってくださいよ」

何度も渡しそびれて、気付けば冷たくなってしまった缶コーヒーに彼女が渋々口をつけた。

「…うま」

「それはよかった」


冷たくはなってしまったが、コーヒーが好きとか、貴女の為に買ってきたとか、もう少し汲んでくれてもいいのになぁ…なんて。

(ヒーローのくせにヘタレ…)