ヤキモチ

テーブルには山積みの書類とパソコン。
それと、灰皿には同じく山積みの吸殻。

テーブルに響く振動に、吸殻がポロポロと転がり落ちた。
スマホに映し出された画面には、愛しの友人の名前だった。

「もしもし。ミルコどうしたの?」

「元気かァ?たまには飯でも行こうと思って」

彼女の誘いなんて珍しいこと、年に1、2回ぐらいだ。

「ちょうどお腹減ってたところ。すぐ出るね」

電話を切ってメガネをテーブルに投げ飛ばせば、山積みの書類が音を立てて落ちていった。
苦笑いを落としながらコートに腕を通して家を出た。

「お待たせ」

彼女の待つ場所まで車を走らせた。
ガードレールに腰掛ける彼女の姿は綺麗だ。

「私も今来たところ。何食いたい?」

「奢り?」

「もちろん。私を誰だと思ってんだ」

「天下のミルコ様」

あからさまなお伊達にニッコリと彼女が笑う。
機嫌が良いのは、この間の件で発散されたからだろうか。
ハンドルを握りながらチラリと横を見れば、窓に頬杖を着く彼女が鼻歌を歌っている。



「そういえばもう少しでビルボード?」

「あぁ、そんなのあったな」

口いっぱいにステーキを頬張る。
まるで漫画の食事シーンのような食べっぷりに、こちらの食欲も刺激される。

「ミルコは何位だろう」

「知らね。他の奴らは新人にビビってるみてぇだけど」

「ふ〜ん。まるでアイドルね」

「……お前は?誰が好きなんだよ」

いつの間にか目の前のお皿は綺麗になっていて、爪楊枝を咥えた彼女が聞いた。

「誰って。ミルコに決まってるじゃん」

即答でそう言った私に対して、全く動じない彼女。
自分の事が好きだと理解しているようだ。

「私なのは知ってる。それ以外ならってこと」

「んー……あ、ダイナマイトだっけ?あの新人の。あの子かな」

「おぉ、アイツはおもしれぇ。根性あるしな」

「へぇ。ミルコが褒めるなんて珍しい。お気に入りなの?」

「お気に入りってわけでもねぇけど、どうせならおもしれぇ奴がいいだろ」

「…なるほどね。そんなに言うなら、彼のこともっと注目してみようかな」

スマホを取り出して、検索には『ダイナマイト 詳細』と打ち込んだ。
ズラリと出てきた検索結果は、彼が期待の新人ヒーローという事を証明するものだった。

「雄英生ね…それは知ってたけど。あぁ、体育祭の子か!あ〜そんな子いたね。ねぇ、ミルコ」

あまりにも反応が無さすぎて顔をあげれば、そこには眉間に皺を寄せた彼女がいた。
何その顔、どうしたのなんて不思議に思って見れば、ハッとした彼女が目を逸らした。
先程の流れを思い出して、口元が緩む。

「……ミルコ、ヤキモチ?」

「っ!はぁ!?誰があんなクソガキに…!!」

「ふふ、誰もダイナマイトに、だなんて言ってないのに」

みるみる家に赤くなっていくのは、きっとアルコールのせいでは無いだろう。
目を見開いて悔しそうな彼女が愛おしくて仕方がない。

「ミルコが気にかけてるって言うから興味が出ただけで」

「…でも最初に奴の名前出したろ……」

「自覚ないみたいだけど似てるんだよ、ミルコと彼。ミルコに似てるから何となく惹かれただけで、私はミルコじゃないと駄目なの。ミルコが好き。ミルコだけが好き」

「はぁ……アホらし。お前が絡むと冷静になれなくなる」

呆れたように目の前のグラスを飲み干した彼女に微笑んだ。
そんなの私だって一緒だと、言おうとして飲み込んだ。
きっとさっきの言葉で彼女は満たされているだろうし、ダラダラと愛の言葉を並べたところで彼女には煙たがれるだけだ。

「さ、今日は寝かせないよ!私もお酒貰っちゃお、すいませーん」

「は?車は」

「そんなのいいじゃん!そこら辺においてたまにはどっか泊まろ!それでゆっくり一緒にお風呂でも入ろうよ。ひろーいやつ」

「はいはい、わかったよ」

「なにその不満そうな顔。たまにはナニもしない時間も必要でしょ?」

「てめぇ!私がいつでもどこでもヤリたがってるみたいに言うな!」

「ちょ!!声でかいってば!!」