ヤキモチ

テーブルには山積みの書類とパソコン。
それと、灰皿には同じく山積みの吸殻。

テーブルに響く振動に、吸殻がポロポロと転がり落ちた。
スマホに映し出された画面には、愛しの友人の名前だった。

「もしもし。ミルコどうしたの?」

「元気かァ?たまには飯でも行こうと思って」

彼女の誘いなんて珍しいこと、年に1、2回ぐらいだ。

「ちょうどお腹減ってたところ。すぐ出るね」

電話を切ってメガネをテーブルに投げ飛ばせば、山積みの書類が音を立てて落ちていった。
苦笑いを落としながらコートに腕を通して家を出た。

「お待たせ」

彼女の待つ場所まで車を走らせた。
ガードレールに腰掛ける彼女の姿は綺麗だ。

「私も今来たところ。何食いたい?」

「奢り?」

「もちろん。私を誰だと思ってんだ」

「天下のミルコ様」

あからさまなお伊達にニッコリと彼女が笑う。
機嫌が良いのは、この間の件で発散されたからだろうか。
ハンドルを握りながらチラリと横を見れば、窓に頬杖を着く彼女が鼻歌を歌っている。

*

「そういえばもう少しでビルボード?」

「あぁ、そんなのあったな」

口いっぱいにステーキを頬張る。
まるで漫画の食事シーンのような食べっぷりに、こちらの食欲も刺激される。

「ミルコは何位だろう」

「知らね。他の奴らは新人にビビってるみてぇだけど」

「ふ〜ん。まるでアイドルね」

「……お前は?誰が好きなんだよ」

いつの間にか目の前のお皿は綺麗になっていて、爪楊枝を咥えた彼女が聞いた。

「誰って。ミルコに決まってるじゃん」

即答でそう言った私に対して、全く動じない彼女。
自分の事が好きだと理解しているようだ。

「私なのは知ってる。それ以外ならってこと」

「んー……あ、ダイナマイトだっけ?あの新人の。あの子かな」

「おぉ、アイツはおもしれぇ。根性あるしな」

「へぇ。ミルコが褒めるなんて珍しい。お気に入りなの?」

「お気に入りってわけでもねぇけど、どうせならおもしれぇ奴がいいだろ」

「…なるほどね。そんなに言うなら、彼のこともっと注目してみようかな」

スマホを取り出して、検索には『ダイナマイト 詳細』と打ち込んだ。
ズラリと出てきた検索結果は、彼が期待の新人ヒーローという事を証明するものだった。

「雄英生ね…それは知ってたけど。あぁ、体育祭の子か!あ〜そんな子いたね。ねぇ、ミルコ」

あまりにも反応が無さすぎて顔をあげれば、そこには眉間に皺を寄せた彼女がいた。
何その顔、どうしたのなんて不思議に思って見れば、ハッとした彼女が目を逸らした。
先程の流れを思い出して、口元が緩む。

「……ミルコ、ヤキモチ?」

「っ!はぁ!?誰があんなクソガキに…!!」

「ふふ、誰もダイナマイトに、だなんて言ってないのに」

みるみる家に赤くなっていくのは、きっとアルコールのせいでは無いだろう。
目を見開いて悔しそうな彼女が愛おしくて仕方がない。

「ミルコが気にかけてるって言うから興味が出ただけで」

「…でも最初に奴の名前出したろ……」

「自覚ないみたいだけど似てるんだよ、ミルコと彼。ミルコに似てるから何となく惹かれただけで、私はミルコじゃないと駄目なの。ミルコが好き。ミルコだけが好き」

「はぁ……アホらし。お前が絡むと冷静になれなくなる」

呆れたように目の前のグラスを飲み干した彼女に微笑んだ。
そんなの私だって一緒だと、言おうとして飲み込んだ。
きっとさっきの言葉で彼女は満たされているだろうし、ダラダラと愛の言葉を並べたところで彼女には煙たがれるだけだ。

「さ、今日は寝かせないよ!私もお酒貰っちゃお、すいませーん」

「は?車は」

「そんなのいいじゃん!そこら辺においてたまにはどっか泊まろ!それでゆっくり一緒にお風呂でも入ろうよ。ひろーいやつ」

「はいはい、わかったよ」

「なにその不満そうな顔。たまにはナニもしない時間も必要でしょ?」

「てめぇ!私がいつでもどこでもヤリたがってるみたいに言うな!」

「ちょ!!声でかいってば!!」