お正月

「大晦日だから、子供たちが寝たら久しぶりに夜更かししちゃおうか」

久しぶりに見た彼女の子供っぽい表情を見て、懐かしさを感じた。
母になってからは子供優先で、その次は俺。
そして自分と、家族のために尽くしてくれてる彼女に頭が上がらない。
クリスマスには家電をプレゼントすれば大喜びされ、逆にこんなもので良かったのかと少し心配になった。

「アクセサリーじゃなくていいのか、?鞄とか、」

「いいの。家事が楽になったら過ごせる時間も増えるでしょ?」

彼女がそう言うから、渋々頷いた。


*


二人の子供の両端に寝転び、俺が絵本の読み聞かせをする。
この間までクリスマスの絵本を読んでいたのに今度はお正月の絵本。
読み終えた本を閉じれば、3人ともすやすやと寝息を立てている。
その姿を見て欠伸をひとつ落とせば、俺も目を閉じた。


*


いつもより少しだけ遅く起きた朝。
リビングからはいい匂いがして、一足先に彼女が起きていることが分かった。
テレビの音が漏れて、お馴染みの挨拶に正月だなぁと実感した。

「悪い、遅くなっ」

「あけましておめでとうございます」

乱れた頭をかきながら声をかければ、キッチンの彼女が振り向くと深くお辞儀した。

「ぁ……あけましておめでとうございます」

つられるように挨拶を繰り返せば、彼女が可笑しそうに笑った。

「ふふふ、おはよう。昨日は寝ちゃってごめんね」

「俺もすぐに寝ちゃったから大丈夫だよ」

「そう。お餅何個?」

「そうだな、2個…いや、3個」

「ん」

温かいお茶を受け取って椅子に座れば、テレビ画面には天気予報が流れている。
しばらく続く晴れマークに、幸先が良いと思う。

テーブルに次々と並べられるご馳走と、お酒が入ったお猪口。

「改めておめでとうございます」

「おめでとう。今年もよろしくどうぞ」

差し出されたお猪口同士をくっつけて、一気に飲みきる。
朝から日本酒なんて、贅沢だとため息が零れる。

「お参りどうする?三が日外す?」

「いや、一日の昼過ぎならどうかな。2人とも歩けるようになったから行こうか」

今まで避けていた人混みも、彼女達の為なら不思議と嫌じゃなかった。

「この間話してた福袋はいいのか?」

「あー、あれはね。オンラインで買っちゃった」

悪戯っぽく笑った彼女のスマホ画面には、発送されましたの文字。
自分の欲しいものぐらいもう少し強請ってくれてもいいのに…と田作り口に運んだ。

「そればっかりじゃなくて他のも食べてよね」

「これお前が作ったのか?美味いね」

そういえば彼女が嬉しそうに笑った。

寝室からバタバタと足音がして、乱暴に開いたリビングのドア。

「パパママおはよう!お年玉!」

「コラ。まずはあけましておめでとうございます、だろ?」

子供たちに注意する姿を見て、彼女が吹き出して笑った。

「親子だね」