「ずるいよ、弔は」
ここ最近ずっとこの調子だ。
何かと問えば黙りを決め込むし、聞かなかったら聞かなかったでさらに機嫌は悪くなる。
「何がずるいって?」
「……。」
「いつまでそうしてんの?聞いても答えないって、もうお手上げだろ」
両手を上にあげて降参ポーズ。
別にふざけてる訳じゃなくて、 どちらかと言えば”本当に勘弁してくれ”のポーズだ。
もうお前の不貞腐れた顔は見飽きた。
今にも泣きそうになる顔も、何かを我慢する顔も。
そんな顔させてしまってるのが自分であることに、さらに苛立ってしまう。
思ったよりも大きく出てしまった溜息に、彼女の肩はビクリの揺れた。
…やってしまった。
様子を伺うようにゆっくりと視線を向けた。
ワンピースの裾を掴んで涙を堪える姿に、ズキリと心が痛む。
「…言ってくれないとわからないんだよ。器用じゃないこと、お前が1番知ってるだろ…?」
ごめん。その言葉が出てこないあたり、俺も頑固だと思った。
「この間…見に行ったの、荼毘くんに連れられて…」
その言葉を聞いて、再び出そうになったため息を必死で飲み込んだ。
「……それで?」
「あんなにたくさんの人に囲まれて…弔が…知らない人、みたいだっ、たの…」
「……」
「大好きな人が、あんなに慕われてる姿みて…嬉しいはずなのに、なんか…嫌だった…!」
遂には子供のように泣き始めてしまった彼女の腕を掴み、自分の方に引き寄せた。
「それで?」
「っぐず……わた、しなんが、ひつよ、う…ないっんじゃ、ないかっで…」
「誰がそんなこと言った?俺言ったっけ?」
泣きながら、首を必死に横に振る。
「わだし、ばっか、り…ずる、いよ…」
彼女の“ずるい”を理解して、緩んでしまう頬を必死に隠した。
あやす様に頭を撫で、背中を優しく摩ってやる。
上手く呼吸出来ず、しゃっくりのような不規則な息遣いが耳元で響く。
「お前は俺だけでいいって言ったろ」
こくんと頷くあたり、こちらの声はしっかり届いているようだ。
「俺もお前だけでいいんだって」
こんな小っ恥ずかしい台詞、頼まれても言ってやらないのに。
自然に出てきてしまうあたり、俺の方がコイツに夢中なんだと実感してしまう。
なんて情けない…こんな姿アイツらには絶対見せられない。
背中に回された手がギュッと服を握りしめる。
また泣き出してしまった彼女はしばらくの間このままだろう。
しょうがないから、泣き止むまでこのままでいよう。
「ほら、目擦るなって」
「っん…だっで…」
「…鼻水拭けって」
「ぐずっ…ありがど…」
「それ落ち着いたら今度は俺の番な」
「んぇ?」
「誰に連れてこられたって言ってたっけなぁ?」