キャバクラで働きましょう 8

【4ヶ月が経ちました】

「生きてるか」

珍しく飲みすぎてしまった日。
送りの車に乗れる状況ではなく、しばらくの間店内で寝かせてもらうことになった。
いつもとは違う照明に、テーブルの上の水が反射する。

目を瞑ったらぐるぐる回る頭のせいで、寝ることも出来ない。
散々吐いたせいか、喉の奥が焼けるように痛い。

ぐったりと寝そべる私に声を掛けたのは、死柄木さんだった。

「大丈夫、です」

ゆっくりと上半身を起こした私を見て、車に乗れるかと聞かれた。
死柄木さんが送ってくれるなんて珍しくて、少しだけ酔いが覚めたような気がした。


真っ黒な車の前まできて、どちらに乗り込もうか迷った。
先に乗り込んだ死柄木さんが、開いた窓から少し笑って助手席を指さした。

「お前一人暮らしだっけ?」

「あ、はい」

「ふーん。ちゃんと食ってんの?」

「時々ですけど、自炊してます」

「へぇ〜偉いじゃん」

走り出した車で、たわいも無い会話。
案外テンポもスムーズで、少し緊張気味だったのが嘘みたいだ。

「結構慣れてきた?」

「うーん、そうですね。なんとなく」

「ちゃんと客も戻ってきてるし、偉いよ」

滅多に褒めない彼の言葉に嬉しくなった。
メールも電話も言われた通りやっているし、お酒にだって慣れてきた。

「他の女共も見習ってほしいよ」

呆れるように吐き捨てた愚痴に、なんて言っていいのか分からず黙ってしまった。

「コンビニ寄る?」

特に気にすることも無く、死柄木さんが呟いた。
私が頷いたのを確認するとコンビニへと入っていった。

特に買うものはないが、店内を歩いて回れば自然とスイーツコーナへ。
期間限定の新しいのが出ているのに気付くと、彼の手がすっと伸びてきた。

「それでいいのか」

「え…いや、いいです!」

慌てる私を見て

「何、違うのかよ」

そう言うと手当り次第カゴの中へと放り込み始めた。

「そんな食べないですって!」

「いいだろ別に。友達とでも食べたら?」

スイーツが沢山入ったカゴを持ってレジに行ってしまった。
強制的に奢ってもらったスイーツを持って、車に乗り込む私を見て死柄木さんが可笑しそうに笑った。


「上手いのあったら教えてよ」

帰り際、スイーツの袋を指さした死柄木さんに見蕩れてしまった。
手元から滑ったドアレバーがガコンと音を立てて、肩が揺れる。

「ったく。何やってんだよ」

運転席から手が伸びてきて、私の前をかすってレバーを掴んだ。
背筋が伸びて、ドキドキしてしまった。
きっとそんな私の様子に気付いてる死柄木さん。

「……もっと早くお前と会えてたらよかったのに…」

ボソリと呟くと、ドアが開いた。

意味深な彼の言葉に惑わされて、その日は寝つきが悪かった。
おまけに夢にまで出てきた死柄木さんは、夢の中でもずるかった。