キャバクラで働きましょう 9

【BIRTHDAY イベント】

出勤してくると、店前にはズラっと並んだスタンドフラワー。
店の中まで花だらけ。
誕生日おめでとうと書かれたのは、店でも人気の女の子の名前。

「すご、」

キョロキョロと目を輝かせる私に、ヒミコちゃんがバースデーイベントだと教えてくれた。

「そういえばナマエちゃんももう少しですね」

「あ、そうなの」

どうして知っているのだろうと疑問に思ったが、ニッコリと笑ったヒミコちゃんの顔を見たらどうでもよくなった。

「当日は大好きな人と過ごすのですか?」

「んーん。特に付き合ってる人いないし。元々出勤日だからお店にいるよ」

自分で言ってて虚しいと思いながら言えば、ヒミコちゃんは「よかった」と呟いた。


1週間後の誕生日当日。
普段通り出勤すると、ヒミコちゃんが嬉しそうに駆け寄ってきた。

「ナマエちゃんおめでとうなのです」

そう言って差し出されたプレゼント。

「0時丁度にメッセージもくれたのに…!ありがとう」

貰ったプレゼントを開ければ、見覚えのあるライター。

「お揃いにしちゃいました」

とヒミコちゃんの手にも同じライターが。
嬉しくて、つい抱きついてしまった私を彼女がギュッと抱きしめた。
そんな私達を見つめていたスピナーさんが、少し照れたように可愛らしいハンカチをプレゼントしてくれた。

オープンと同時に入ってきたのは迫さんだった。
テーブルには乗り切らないほどのお酒とフードが並び、ホールケーキまで運び込まれた。
勿体ないほどの「おめでとう」と「可愛い」を口にした迫さんは、いつもに増して酔っ払っていた。

仕事終わりには、お店からだと言って新しいドレスを貰った。少し遅れて店に来た死柄木さんからは、靴を貰った。

「これで手癖の悪いオッサン共、踏みつけてやれ」

と言って笑った。


送りの車は珍しく荼毘さんだった。

「誕生日だったんだって?」

「はい。こんなにお祝いしてもらうの小学生以来です」

花束を抱えた私をルームミラーでちらりと見つめる。

「これで家に帰って彼氏でもいてくれりゃ完璧なのになァ」

ニヤリとバカにしたように笑った。
最近の荼毘さんはとても意地悪だ。
最初のイメージはすごく怖くて、この間のデートでは優しくて、なんかずるいと思ったのに。
ここ最近はこうして会えば茶化してくることが多い。

「別に今は困ってませんから」

「へぇ。じゃぁどうしてんの?」

「?」

「寂しい時。1人でオナニーでもしてんの?」

「ちょ、!何言って!」

「そうだ。プレゼントに玩具でも買ってやろうか?ドンキ寄る?」

「いいですいいです!ほんとに荼毘さんサイテー」

「遠慮すんなって。それとも今日だけは相手してやろうか?ナマエちゃん」

認めたくないが、色気たっぷりの笑みに一瞬言葉を失ってしまう。
丁度車は家の前まで止まり、悔しさとイラ立ちに勢いよくドアを開けた。

「結構です!お疲れ様でした!」

夜中に大声で近所迷惑だと、自分でも心の中で思いながらドアを閉めようとした瞬間。
さっきまでニヤニヤしてた荼毘さんが、急に優しく微笑んだ。
ハンドルを握った腕に頬を当てて

「誕生日おめでとう」

なんて言うから、何故か分からないけどやたら目頭が熱くて泣きそうになった。