【BIRTHDAY イベント】
出勤してくると、店前にはズラっと並んだスタンドフラワー。
店の中まで花だらけ。
誕生日おめでとうと書かれたのは、店でも人気の女の子の名前。
「すご、」
キョロキョロと目を輝かせる私に、ヒミコちゃんがバースデーイベントだと教えてくれた。
「そういえばナマエちゃんももう少しですね」
「あ、そうなの」
どうして知っているのだろうと疑問に思ったが、ニッコリと笑ったヒミコちゃんの顔を見たらどうでもよくなった。
「当日は大好きな人と過ごすのですか?」
「んーん。特に付き合ってる人いないし。元々出勤日だからお店にいるよ」
自分で言ってて虚しいと思いながら言えば、ヒミコちゃんは「よかった」と呟いた。
1週間後の誕生日当日。
普段通り出勤すると、ヒミコちゃんが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ナマエちゃんおめでとうなのです」
そう言って差し出されたプレゼント。
「0時丁度にメッセージもくれたのに…!ありがとう」
貰ったプレゼントを開ければ、見覚えのあるライター。
「お揃いにしちゃいました」
とヒミコちゃんの手にも同じライターが。
嬉しくて、つい抱きついてしまった私を彼女がギュッと抱きしめた。
そんな私達を見つめていたスピナーさんが、少し照れたように可愛らしいハンカチをプレゼントしてくれた。
オープンと同時に入ってきたのは迫さんだった。
テーブルには乗り切らないほどのお酒とフードが並び、ホールケーキまで運び込まれた。
勿体ないほどの「おめでとう」と「可愛い」を口にした迫さんは、いつもに増して酔っ払っていた。
仕事終わりには、お店からだと言って新しいドレスを貰った。少し遅れて店に来た死柄木さんからは、靴を貰った。
「これで手癖の悪いオッサン共、踏みつけてやれ」
と言って笑った。
送りの車は珍しく荼毘さんだった。
「誕生日だったんだって?」
「はい。こんなにお祝いしてもらうの小学生以来です」
花束を抱えた私をルームミラーでちらりと見つめる。
「これで家に帰って彼氏でもいてくれりゃ完璧なのになァ」
ニヤリとバカにしたように笑った。
最近の荼毘さんはとても意地悪だ。
最初のイメージはすごく怖くて、この間のデートでは優しくて、なんかずるいと思ったのに。
ここ最近はこうして会えば茶化してくることが多い。
「別に今は困ってませんから」
「へぇ。じゃぁどうしてんの?」
「?」
「寂しい時。1人でオナニーでもしてんの?」
「ちょ、!何言って!」
「そうだ。プレゼントに玩具でも買ってやろうか?ドンキ寄る?」
「いいですいいです!ほんとに荼毘さんサイテー」
「遠慮すんなって。それとも今日だけは相手してやろうか?ナマエちゃん」
認めたくないが、色気たっぷりの笑みに一瞬言葉を失ってしまう。
丁度車は家の前まで止まり、悔しさとイラ立ちに勢いよくドアを開けた。
「結構です!お疲れ様でした!」
夜中に大声で近所迷惑だと、自分でも心の中で思いながらドアを閉めようとした瞬間。
さっきまでニヤニヤしてた荼毘さんが、急に優しく微笑んだ。
ハンドルを握った腕に頬を当てて
「誕生日おめでとう」
なんて言うから、何故か分からないけどやたら目頭が熱くて泣きそうになった。