【迫先生はいつもずるい】
先生が廊下を歩くと騒がしくなるのはいつものことだった。
派手なギャルも、素行の良くないヤンキーも、真面目で根暗なオタクまで。
特に女子からは人気で、群がるそれはまるで発情期の猫のよう。
みっともない…そう思いながらも、所詮私もその一部なわけで。
「先生ッ」
「おぉ、おはよ」
うるうる瞳に上目遣い、短いスカートに男ウケバッチリのメイク。
6時起きで抜かりなし。
そんな私を、先生はじーっと見つめた。
「…メイク変えた?いいじゃん、男はそういうの好きだよ」
「ホント!?先生は?好き?」
「んー、俺は」
言いかけた所で、中庭から呼ぶのは上級生の甘ったるい気持ちの悪い声。
長身の先生は、どこにいても目立ってしまうからしょうがない事なのだ。
私にも向ける笑顔で中庭の女達に手を振るのを見て、納得できない私はあからさまに不貞腐れた。
「なんだよ、その顔」
可笑しそうに笑って私の頬を軽く撫でた。
軽く触れられただけで全部チャラにしてしまうんだから、先生はずるい。
何だか恥ずかしくて、悔しくて、顔を背けた。
「さっきの続きだけど。スカートの丈短すぎ、放課後生徒指導室」
「ぇ」
そう言うと私の頭を軽く小突き、隣のクラスへと入っていった。
♢
「迫先生〜?」
ノックと同時に先生の名前を呼べば、間延びした声が応えた。
「いいよ、入んな〜」
失礼します、とボソリと呟くと部屋に入った。
長い足を組んだ先生が、だらしなく椅子に座っている。
くぁ、と大きな欠伸をすれば、目尻には涙。
いつもシャキッとしている先生の油断した姿に、ドキッとしてしまった。
「なんで君は呼ばれたのでしょうか、はい」
「え、っと…スカートの丈が短い…から?」
「はい、正解。……お前ねぇ、それはやりすぎ」
「だって…」
「だってもクソもねぇだろ。誰にパンツ見せて歩いてんの」
「見せて歩いてないもん!これが可愛いから!」
「はぁ。ちょっとこっち来てみ?」
組んだ足を解くと、先生が手招きした。
目の前まで立っては見たが、もう少しこっちだと言われ困惑する私。
見かねた先生が私の手を引くと、足の間に入るように立たされてしまった。
「ッ!」
心臓の音がうるさすぎて、先生に聞こえてしまうんじゃないかと思うほど近い。
鼻息すら気まずくて、息の仕方を忘れるほど苦しくて熱い。
こんな至近距離で先生を見るのは初めてで、ウロウロと落ち着かない視界。
完全にテンパった私を見て、先生は笑った。
「焦り過ぎ」
俯く私を覗き込むから、どうしようもなくなった私はギュッと目を閉じた。
「ちょっとでも屈んだら丸見えよ?ほら、見てみ」
言われた通り振り向けば、ガラス棚に映った後ろ姿。
ガラスに映った先生が、まるで私にしがみつくように見えて更に顔が熱くなる。
今日はどんな下着を付けていたかなんて全く思い出せなくて、咄嗟にスカート抑えた。
そんな私をガラス越しに見る先生は、ニヤリと面白そうに笑った。
「俺的にはもう少し長いスカートが好みだけど、お前はどう思う?」