【死柄木先輩はいつもちょっかいを出してくる】
何故か死柄木先輩は私を見るとちょっかい出してくる。
自販機に小銭を入れた後、私が押す前に押してしまうし。
「え」
「ラッキー。ごちそうさま」
なんて言って、そのままどこかに行ってしまう。
もちろん小銭は帰ってこないし、後日奢ってくれるなんてことも無い。
赤点の私が教室で補習を受けていれば、廊下から見た先輩が大きな声でバカにすることもあった。
「は?お前もしかして赤点なの?」
「せ、先輩っ!シー!うるさいですって!」
「いつも間抜けな顔してると思ったら、頭も間抜けなのかよ。恥ずかし」
「シー!シーー!!」
隣を歩くのは怖いと噂の荼毘先輩。
覗き込んだ荼毘先輩に、アイツだと指までさす始末。
ヒラヒラと真顔で手を振る荼毘先輩に、気まずい私はそっと目を逸らす。
視線が痛くてチラリと見れば、未だ手を振る荼毘先輩と、心底機嫌が悪そうな死柄木先輩。
もちろん先生には私が怒られてしまったし、補習のプリントが増えたのは言うまでもない。
死柄木先輩にはしばらく会いたくないからと、仲の良い死柄木ファンに情報を貰うことにした。
ついでに荼毘先輩の名前を出せば、敵意むき出しの瞳で睨まれた。
先輩と合わない生活はすこぶる調子が良かった。
彼らが通らない中庭への階段を降りて自販機へと向かう途中、女の子の声が聞こえた。
会話の流れ的に告白のようで足を止めたが、誰と誰が話しているのか酷く気になった。
こんな所、先輩どころか友人にも見せられないが、興味の方が勝ってしまった。
「……だから、好きなの、」
震える声で女の子が話しているのを、ゴクリと唾を飲んで聞き入る。
相手の男子の声は全く聞こえなくて、なんて酷い男なんだと覗き込んだ瞬間。
しゃがみ込んだ私の視界を覆う影に、心臓がドキリと脈打った。
「なんだよ。わざわざお前から会いに来てくれたのか」
聞き覚えのある声がして恐る恐る顔をあげれば、案の定死柄木先輩。
「ひっ!」
悲鳴になれなかった声を発する私を見て、彼がニッコリと笑うが不気味すぎる。
「俺こいつしか興味ないんだ」
冷たく思いトーンで言い放たれた言葉に、女の子は走って逃げてしまった。
「す、すすす、すみま、せんでした…」
「何が」
「盗、み聞き…とか…」
「別に。むしろ好都合」
「……へ?」
「さっき言ったろ。お前にしか興味がないんだよ」
意地悪く言う先輩を目の前にして、何も言えなくなってしまった。