「な、なんだよ」
「ねぇ、スピナーって童貞?」
さっきから俺をじっと見つめるこの女。
前から思ってはいたが、デリカシーがない。
デリカシーなんて女が使う言葉だとは思っていたが、今の時点で男も使っていい言葉だと言うことが判明した。
「なっ!お前失礼だろ!」
「え?恥ずかしがることじゃなくない?その反応の方が逆に恥ずかしいよ」
悪びれる素振りもせず、少しびっくりしたような顔で彼女はそう言った。
鼻で笑った荼毘も目につくし、哀れな目で見るマグ姉。
アンタの同情の眼差しも結構傷つくんだ、と心の中でツッコんだ。
逆に恥ずかしい。そう言われてしまったら、悔しいが口を噤んで再び椅子に腰掛けることしか出来なかった。
「……だったらなんだよ…女にモテたことねぇんだからしょうがねぇだろ」
そもそも女にモテる為にヴィランになった訳じゃないのだ。
トカゲの容姿を気持ち悪がられようが、モテなくて一生童貞だろうが、それでもいいと心に決めたんだ。
見た目だけは完璧な女が、今更俺をバカにしようがどうでもいい。
この際だから、女の意見ってやつを聞いてみようじゃないか。
「モテたいの?」
「う……いや、別に」
じっと見つめるこの女の眼力に負けるな俺……!
「い……一生に一度くらいは……」
負けてんじゃねぇよ、俺。
「ふーん……そうね、この中で誰が女にモテそう?」
「は?いや、女の気持ちなんてわかんねぇよ」
「想像よ、想像。自分が女だったら〜って」
「……弔、か……荼毘……?」
「えー、趣味悪。誰か決めろって言われたらどう考えてもコンプレスでしょ」
いやいや待て。
質問してきたのはそもそもお前だし、本人を目の前にしてそんなこと言うか?
それだからデリカシーがないだのなんだのって言われるんだ。
ほら、聞き耳立ててる荼毘が納得いかない顔してこっちを見てる。
弔がいなくてよかった…きっと今頃喧嘩が始まってる。
「アンタが選んだ弔は、どんなに頑張っても中身はまだお子ちゃま。荼毘は絶対DVするでしょ?トゥワイスは良い奴だけど、恋人にするにはクセが強すぎる。それでアンタは女に免疫のない童貞野郎♡」
語尾にハートがチラッと見えた気がして、不覚にもやっぱり可愛いと思ってしまった。
何故か俺もディスられてた気がするが、他の奴の理由と比べたら大したことないと安心してしまった。
「ね?消去法でコンプレス。見た目はちょっとアレだけど。セックスは上手そうだし、大人の余裕もある」
そう言い終わると、後ろを振り向いた。
ミスターに向けてウインクを落とす横顔。
いい女って言うのはウィンクも恥じらいなくするのかと、つい見惚れてしまう。
それに気付いたミスターも、なんの抵抗もなく彼女に対して投げキッスで応えた。
この2人、出来てるんじゃ……。
見惚れてた俺の方へと向き直した彼女がニコリと笑う。
「ほらね、アレがモテる男のお手本。どうせならあのぐらい出来ないとモテないわよ」
「……俺にはハードル高すぎだろ……」
無理ゲーだと項垂れる俺と彼女の間に、入り込むように置かれた手。
「楽しそうな話してるね」
「そう思う?コンプレス」
「あぁ。でもまぁ、俺はそれよりもさっきの可愛らしいウインクの方が気になるけど。今夜相手でもしてくれるのかな」
目の前で好みの女が口説かれるのを、ただただ見つめる俺はヘタレだ。
弔や荼毘みたいに男らしく止めることも出来なければ、コンプレスやトゥワイスみたいに色気で止めることも出来ない。
先程までニコニコしていた彼女が、一瞬で真顔になった。
ミスターを挟んだ俺でさえ金玉が縮こまったんだ。
間近で見ているコイツは金玉どころか、竿まで持っていかれちまったんじゃないかと心配になった。
「お手本としては良かったんだけどなぁ……マイナス80点」
「は?マイナス?」
「私が性欲を持て余してる暇な女に見える?誰でもいいから相手を探してる女に見えたってことなら、コンプレスもまだまだね」
そう言って立ち上がると、俺の腕を掴んで強引に引いた。
腕に彼女の柔らかいナニかが当たる。
「今日は彼に相手してもらうことに決めてるの。ごめんね、コンプレス」
「っちょ……!!」
慌てる俺の口元に人差し指を添えた彼女が、シーっなんてするもんだからされるがままアジトを後にした。
童貞の俺には全てが刺激的すぎるだろ……!
「あーぁ、捕まっちゃったよスピナー。ありゃ童貞卒業確定だわ」