狭い空間

「なぁ、閉じ込められる部屋って知ってる?」

唐突な彼の言葉に反応する間もなく、気付けば彼の空間に居た。
何度か入ったことあるソコは窮屈で、なんとも言えない空間に息が毎回詰まる感覚。
密閉された空間に恐怖を感じることを理解している彼が、何故か同じ空間にいるのは違和感があった。

「ッハァハァ…なん、で……」

「なんで?それは圧縮されたことか?それとも俺が居ること?」

どちらもだと答えようとするが、口は必死で酸素を取り込もうとする。
言葉が出なくて、ゆっくり帽子と仮面を外していく彼の姿をただただ見つめるだけしか出来ない。
胃酸が逆流して行くような気持ち悪さと、目眩までしてきた。
ぺたりと座り込む私の姿を見て、彼はこれっぽっちも気にしていないようだ。

「いやぁ、俺としたことが盲点だったよ。そんな部屋探さなくたって、俺と一緒に閉じ込めてしまえばいいってね」

ニッコリと笑っているが、私を見つめる瞳は笑っていない。
膝まづくように、前のめりに座り込む私の顎に手を添えた。
猫をあやすかのように、指先は顎下を撫でる。
上がってきた胃液に喉が上下を繰り返す姿を見て

「お前狭いところ苦手なんだっけ」

なんて、分かっているはずなのに。

顎を撫でた指先が喉から鎖骨にかけて滑り落ちる。
悪寒にも似た感覚に、体が硬直して行く。

「大丈夫だよ。終わる頃には苦手も克服してるかもな?」