「なぁ、こんな俺が一緒に死んでくれって言ったらどうする?」
「、え……急にどうしたの?」
行為が終わった後の、散らばった衣服を手に取った私に彼が呟いた。
いつもなら彼はタバコに火をつけて
「後でもう1回するから着なくていいよ」
なんて言うはずなのに。
「……痛む?」
無意識なのか、左手を摩ったのを見逃さなかった。
「いや…?たまにさ、感覚があるんだよ。無くなっちまったはずの腕の感覚」
可笑しそうに笑った彼の雰囲気が、いつもと違う気がした。
先程の台詞も含めてなんだかおかしい。
腕を通しかけたキャミソールを投げ捨てると、彼の側に寄った。
左肩に手を添えて痛みはないかと問えば、首を横に振った。
人間の体は不思議だ。
失われた体の一部は、時々こうして感覚として現れるのだ。
そのせいで失った時の悲しみや痛み、怒りを再び思い出させてしまう。
彼の腕を包み込むように抱きしめる。
激しく動いた後の肌は、汗ばんだせいか酷く冷たい。
塞がったハズの傷が再び開かぬよう、そう思いを込めて抱きしめる。
「……暖かいな」
「、うん」
「……なぁ、さっきの質問、答えてくれないか?」
今にも泣きそうな私の頬に手を添えて彼が微笑んだ。
ゆっくりと瞳を開いて彼を見れば、私よりもずっとずっと泣きそうな顔をしている。
さっきまでたくさん愛し合ったのに、気持ちよくて、暖かくて、幸せだったのに。
なんでそんなに哀しそうな顔、してるの……?
「こんな俺、じゃなくて…そんな貴方だからこそ、死ぬ時ぐらい一緒に居させてよ…」
いつも落ち着いていて大人な貴方が、眉を下げて余裕がなさそうに笑うもんだから、せっかく我慢してた涙は瞳から溢れてしまった。
もうこれ以上怪我はしないで
どこにも行かないで
早く帰ってきて
置いていかないで
死なないで
私を忘れないで
お願い
言いたいことは山ほどあるのに、優柔不断な私はどれも選べなくて、結局言い慣れた言葉に頼ってしまう。
「愛してる」
そう言ったら貴方は、いつもみたいに嬉しそうに笑った。
「俺も愛してるよ」
私の頬を撫でておでこにキスを落とした彼は、そのまま帰ってくることは無かった。