いい子いい子

「ねぇ、コンプレス!」

彼の姿を見つけて、側まで走っていくとこのまま抱きついた。
細身の体で受け止めて、慌てふためく彼はいつも通り。

「おいおい、それやめてって!おじさんドキマギしちゃうよ」

そう言って背中には絶対回らない両手。
抱き締め返してくれたっていいじゃないかと、不貞腐れた顔して見上げる。

「…ん?どうした?」

そう言って伸びてきた手は、頭をよしよしと撫でるだけなのもいつも通り。
上目遣いで見つめようが、抱き締め返してと言葉で伝えようが彼はずっとこのままなのだ。
首を傾げて誤魔化して、いつも通りかわすだけ。


「なんだよ、珍しいな」

弔とゲームに夢中なスピナーの隣へと腰掛けた。

「んー・・・」

「いいのかよ、コンプレスあっちいるぜ?」

行かないのかと、スピナーがチラチラと彼を見る。
いつもだったら彼の側には私がいて、落ち着くはずなのに今日の私はそうじゃないみたい。

「いいでしょ別に。たまにはスピの隣がいいんだもん」

不貞腐れて適当にそんなこと。
言われた当の本人は、びっくりした後真っ赤になった顔を隠してなんとも可愛い。
スピってなんだかんだ良い奴で優しい奴なんだって、改めて感じる。

「ゲームなんかいいから慰めてよ」

「は?」

「だからぁ、慰めて。いい子いい子してよって」

頭をスピに向けて傾ける。
早くしろと上目遣いで見つめて催促。
相手にしてくれない彼より、目の前のトカゲ。
間違えた、ヤモリ。

何故かキョロキョロと周りを見渡したスピが、恐る恐る手を伸ばした。
不器用ないい子いい子まであと少し。

「、は、?」

スピの間抜けな声が聞こえて、下げた頭を上げればいつの間にかコンプレスの姿。
スピの伸ばした手を彼が掴んで、まるでいい子いい子を阻止するようなソレ。
瞬きを数回繰り返して、スピと彼を交互に見た。
掴まれたスピだって、何が起きたかいまだにわかっていない様子だ。

「悪いね、スピナー」

「、へ、あ、いや、」

「これは俺の役目なんだ」

パッとスピを解放した手が、優しく私の頭上に置かれた。
いつものように、髪を梳くように優しく撫でられる。
徐々に熱が集まって、気づけば真っ赤になった私の顔。
それに、いつもよりも何倍も満足そうな彼の顔。