怒鳴り散らした私を置いて、彼は何も言わずに寝室のドアを閉めた。
きっかけなんて些細なことで、嫌になり始めたら何が何だか分からなくなってしまった。
そっとしておいて欲しい自分と、心配して話を聞いて欲しい自分が行ったり来たり。
怒った後は必ずと言っていいほど涙が溢れてきて、さらに訪れるのは自己嫌悪。
なんで女ってこんなに情緒不安定な生き物なのだろうと、心底嫌になる。
拭っても拭っても垂れてくる涙に目を閉じれば、そのまま眠ってしまった。
目を覚ますと目元が熱を持っていて、頭がぼんやりと重い。
そっとリビングのドアを開ければ、ソファに座った彼の後頭部が見えて安心した。
なんて声をかけたらいいか分からなくて、再びドアを閉めようとすれば彼が呟いた。
「どう、落ち着いた〜?」
緊張感のない、間延びした声。
「…うん」
「ん、よかった」
パタンと本を閉じる音がして、ソファの背もたれに顎を乗せてこちらを振り向いた。
「そりゃ、人間余裕がねぇ時もあんだろ。せっかく2人でいるんだしさ、余裕がある方が笑ってりゃいいんだよ」
そう言うといつもの笑顔で私に笑いかけた。
「っ、ありがと」
ごめんの代わりのソレと、彼のそばに駆け寄って目一杯のハグ。
イテテ、なんて言いながらも優しく背中を撫でる大きな手。
「圧紘さんが余裕ない時はどうしたらいい?」
「んー。膝枕してダメになるほど甘やかしてくれよ」
「圧紘くんよちよち〜って?」
「いいねぇ、それ。そのまま赤ん坊プレイにもつれ込んじゃうか」
「え、キモイ。絶対やだぁ無理」
「……そんな嫌がるなよ、俺だって気持ち悪いと思ったわ」
「ふふ、じゃぁなんで言ったの」
「お前が笑うと思って。そうやってお前が笑ってくれりゃ俺も笑っちまうわけよ。な?」
涙跡が残る頬を彼の親指が優しく撫でるから、収まったはずの涙が瞳を濡らした。