「ねぇ、迫 圧紘って本名?」
煙草をふかす横で、シーツを手繰り寄せた。
何も履かないのはなんだか苦手で、器用に足の指先で掴んだ下着は意味もないぐらい湿っている。
「なに急に、偽名でも使ってるって?信用ないなぁ」
なんて困ったように苦笑いする彼を見て、心臓が締め付けられた。
疑っているよりも、彼にこんな表情させてしまっている事に酷く後悔した。
私はきっと“めんどくさい女”だ。
「全部打ち明けてるつもりだけど。これ以上脱ぐもんはないよ、丸裸」
はははと、冗談交じりに笑って見せた彼は、出会った頃から嘘が上手い。
優しくて器用で大人な彼だけど、肝心な時だけ逃げ足が早いのだ。
最初から真実を聞いていればこんな関係にはならなかったのに。
黙る私をみて、軽いため息をついた。
「お前の周りの男共に比べたら、そりゃぁ若さも体力も劣るだろうし」
「っ、そうじゃない、!」
「……気にしてるんだろ?」
ほら、そうやって。
的はずれなこと言って、誤魔化して。
そんな瞳で見たら私が何も言えなくなっちゃうこと、貴方は知っている。
「そんなの、関係ない…」
本当は聞きたいことが山ほどある。
本名は?
誕生日は?
血液型は?
結婚してる……?
喉まで出かかって、グッと堪える。
これを聞いたら関係が崩れてしまいそうで。
鼻の奥がツンとしてきて、視界が歪む。
そんな私を見兼ねてか、
「おいで」
優しくそう言って、私の手を引いた。
履き掛けの下着をグッと押し下げられてしまえば、再び重なる身体。
キスをして、お互いの身体に舌を這わせる。
綺麗なその肌に私の跡でも残せたらいいのにと、意地の悪いこと考えてもする勇気はない。
セックスする時の癖を知っているのは、私だけでいいのにと何回も願った。
コンドームを手に取った彼が、口付けを落とした。
彼の頬を包んで、愛おしく見つめる。
「まるで仮面をつけたままのキスね……」
「……今日は随分と困らせるんだね」
「夢だったらいいのに……」
「夢でいいの?俺にとっては今が全てなんだけど」
そう言い終わると、彼が私の中へと入っていく。
自然と漏れる吐息に、ゆっくりと彼に合わせて吸い付く中。
頭と心はこんなにも荒れ果てているのに、身体は正直だと可笑しくて笑うしかない。
「こんなに求めあってるのに、お前には何も伝わらない?」
「、っ…セックスだけじゃ悲しいわ」
「……じゃぁもう辞めた方がいい、?」
ほら、またそうやって私に選ばせる。
貴方が決めてくれたら、私はこれから先もずっと着いていくのに。
「わからない、」
「どこに逃げるつもりだよ」
「……貴方のいない所」
「だったら俺も一緒に。このまま」
彼の欲がコンドーム越しに放たれるのを、中で感じる。
いっその事、中にでも出してそのまま捨ててくれたらいいのに。
頭のどこかで彼に嫌われることを望んでいる私がいる。
シーツにくるまって、後ろから貴方が抱きしめる。
「もう覚悟はできた?」
「……わからない…でも……」
「でも、?」
「今はこのままこうしていたいの…」
許されなくてもいい。
許してくれなくてもいいから、今はもう少しだけ夢を見せて……。
倖田來未×石田竜也…『K.A.M.E.N』より
twitter相互様よりお題頂きました。
Special Thanks♡Lumチャン