「ねぇ、あつひろさんて〜インカメもってない?」
「ん?なんて?いん、カメ?」
「うん、インカメ」
当たり前のように話す彼女に、頭をフル回転させるも全く答えは出てこない。
あえてフルネームで出さないあたり、彼女も面白がっている表情だ。
「じゃぁ〜チェキは?」
「……チェキってあの?カメラの?」
「うん」
「…!あぁ!インカメってインスタントカメラ!?」
ぱちぱちと両手を叩いて正解〜、なんて嬉しそうだ。
普段俺の事おじさんじゃないよなんて言ってくくせに、こういう時はおじさん扱いするこの子は現役女子高生。
「知ってる!知ってる!もろ世代だって。けど、さすがにインスタントカメラなんか残ってないなぁ」
「ぴえん。欲しかったのに。」
「でた、ぴえん。ほんと何回聞いても面白いんだけどそれ」
「えー、可愛くない?ぱおん」
「お前がやってたらなんだって可愛いって……ちょっと待って新しいじゃんそれ。なに?ぱおん?」
会う度に不思議な略語、もはや呪文に近い若者言葉で喋る彼女。
見た目も派手だけど、化粧を落とせば綺麗な顔してるし。
おバカっぽく見えるけど本当は頭のいい所。
全てが可愛らしくて、ずっと見ていても飽きないのだ。
突然インカメが無いかと聞かれたが、使い道は?
きっと写真を取りたいのだろうけど、今現像ってやってんのか?と、逆にこちらが聞きたいぐらいだ。
この前はギラッギラに装飾されたガラケー持ってたよな?
あれ俺が学生の頃に流行った機種だぞ?
どこで手に入れたんだよ、つーか起動すんのか?
聞きたいことは山ほどあるが、膝の上で鼻歌歌いながらスマホいじるこの子を見たらどうでもよくなった。
「今日の髪型可愛いね」
「ほんとに!?嬉しい〜友達がやってくれてね、年上の男はこういうのが好きだって言ってた」
「……その子ホントに同じ歳?」
「うん!カレシが40歳なんだって」
「……あっそ。なんか複雑だわぁ〜」
「大丈夫!あつひろさんが40歳になっても私がずっと居るから!おしめとか替えてあげる!」
いや40歳はまだまだ元気だって、そうツッコミそうになったが自慢げに言う彼女が可愛くて、その言葉を飲み込んだ。
「こんな可愛い彼女がずーっといてくれるなら俺は幸せ者だわ」
そう言っておでこにキスを落とせば、頬を赤らめた彼女が恥ずかしそうに俯いてしまった。
「インカメ越しのあつひろさんめっちゃ映え!!」
後日どこからかゲットしてきたであろうインスタントカメラを手に、彼女が喜んでいる。
スマホの上に重ねるようにインスタントカメラ…。
なに?何がどうなってんの?俺の知らない新手のマジックか?
「ほら!みて!可愛くない!?」
「……うーん、俺インカメ世代だからなんとも言えないんだよなー…」