彼女と初めて出会ったのは、公園だった。
たまには陽の光でも浴びとかないと、ただでさえ歳を感じてきたっていうのに。
だからってそこらへんフラフラ散歩でもして職質されても困る。
あまり人もいなさそうな公園のベンチに腰掛けて、日光浴。
そう思って出てきたのに気づけば日陰のあるベンチを探してるあたり、完璧に夜型人間だ。
適当に手にした本に目を移す。
セミの鳴き声と子供の鳴き声をBGMに、ページをめくる。
何時間そうしていただろう、あることに気がついた。
(あの子供ずっと泣いてねぇか…?)
声のする方に目を移せば、滑り台の下で泣きじゃくる子供が1人。
(可哀想に、迷子か?親は何してんだか)
再び手元の本に目線を移す。
「わぁーん」
「………。」
「おがぁざぁん、わぁーん」
「………ッチ」
子供なんて元々得意じゃないんだ。
マジックを見せてやれば驚くくせに金は寄越さねぇ、もっとやれだの言ってくる図々しい生き物だ。
それじゃなくても毎日子供みたいな奴らと仕事しているんだから、休みの日ぐらいゆっくりさせてくれ。
そう思ったのに、足は泣きじゃくる子供の元へと進んだ。
「なぁ、泣き虫坊主どうした?お母さんは」
「わっがんない、どっがいっぢゃっでっ、」
「おーおーまずは落ち着け、な?」
そう言って胸元のハンカチーフで子供の涙と鼻水を拭った。
汚れてしまったソレをくしゃくしゃと丸め、手のひらに隠してみせると子供は首を傾げた。
開かれた手のひらから勢いよく羽ばたく白い鳩。
キョトンと目をまん丸にするが、ビックリしすぎたのか再び泣き出した。
「え、ちょ、今のは驚くところだろ?」
これだから子供は嫌なんだ。
先程よりも盛大に泣き出す子供と慌てふためく大人。
こんな所ヒーローにでも見られてしまったら大変だ。
「今のやば!どうやってやったの?!」
いつの間にか後ろに立つ女の声。
子供に夢中で存在に気づけなかった。
(面倒だな…このまま2人ともどうにかするか…)
できるだけ冷静に、ゆっくりと振り向いた。
が、そこに立っていたのは制服を着た女子高生。
明るい髪色にバッサバサのまつ毛。
スカートはパンツが見えそうだし、それ制服か?ってぐらい着崩されたカッターシャツ。
目を輝かせて拍手をする姿に、緊張感が解けてしまう。
「ねぇ、君なんで泣いてんの?今のちょーヤバかったのに!」
突然の登場に子供も泣き止んでしまったようだ。
少しだけ安心したような表情になるのだから、女性って凄いんだと思い知らされる。
「君の鼻ちーんしたハンカチが鳩さんになったんだよ?ヤバくない?泣いてたらもったいないって!」
子供の隣に駆け寄るとしゃがみこんでそういった。
(…えっと…パンツ丸見えなんだよなぁ)
次はまだかと目を輝かせながら子供と女子高生がこちらを見つめる。
「あー…じゃぁ次はコレな」
何個かマジックを披露したところで、母親の呼ぶ声がした。
今まで何していたんだと文句のひとつでも言いそうになったが、母親の慌て具合を見てしまったら何も言えなくなってしまった。
「おかーさん、帰ったらその子たくさん褒めてあげてねー!泣かないで偉かったって」
女子高生がそう言うと何度も頭を下げる母親。
嬉しそうな子供はこちらを手を振った。
今時珍しい女子高生もいるもんだな。
「ありがとうね、おじさん助かったわ」
「お兄さんがありがとうなの?楽しませてもらったのはウチらなのに、ウケるwww」
心の底から楽しそうに笑う顔が印象的だった。