助けてくれたのはヴィランでした2

いつだったか、
人混みに紛れて街をうろつく俺の横を1人の女が通り過ぎた。

『とうや!』

透き通るような声で呼ばれる懐かしい名前につい反応してしまった。
呼ばれて振り返る男は、俺とじゃ比べ物にならないぐらい小綺麗な格好をした奴だった。
そんな男の名前を呼び嬉しそうな顔で笑う女を見たんだ。
やけに耳に残るその声と、女の笑った顔
いつの間にか、街中に出てはお前に似たような背格好の女を目で追うようになり、
挙句の果てには夢にまで出てくるようになっちまった。


アジトに向かう途中、気持ち悪ぃ酔っ払いに絡まれてる女がいた。
よく見るとこの間の女だと気付いた。
願ってもいない再会に笑いが込み上げた。

女はドラマみてぇな出会いが好きだって、なんかの本で読んだことがある。
そうか、俺はお前に試されてるのか…?
なら、お前が俺のところに来やすいように舞台は用意してやるから覚悟しておけよ?




「おい、お前。金に困ってんだろ?」

その辺にいるヴィランであろう男に声をかけた。

「襲って欲しい女がいる」

そう写真を渡すと歯が抜けた品のねぇ男はニヤリと笑った。

「犯していいのか?殺していいのか?」

「あぁ、好きにしろ。金はその後だ」




人通りの少ない夜道で彼女に襲いかかるヴィラン。
下半身から汚ぇちんこ出してアイツに押し付けると、必死に腰を降り始めた。
首を締められて思うように息が出来ない彼女はそろそろ限界が近いか…
さぁ、ヒーローのお出ましだ。
ヒーローなんて胸糞わりぃはずなのに、お前だけのヒーローになれんならたまにはこんなのもいいかもな。


昔親父とみた古い映画に、顎と後頭部を掴みひとひねりで殺害するシーンがあった。
あの時見た映画の主人公と同じソレは、思ったよりも簡単で
鈍い音と手から伝わる振動にゾクゾクした。
あぁ、燃やすのも楽しいが、これもいいな…。
名残惜しそうに離すと彼女に声をかけた?

「大丈夫か?」
「俺が、わかるか…?」
「怖かったら目を瞑ってていい」

そう言い聞かせ、抱き寄せた彼女の耳元を片手で塞いだ。


お前のお陰だ、ありがとう…。

右手をかざし蒼い炎で包み込む。
いつもみたいにもがき苦しむのを楽しむためではなく、一気に。
こいつが我に返って目を開ける前に…。

パチパチと燃えカスが風に吹かれて空に舞い上がる。

まだ胸の中の彼女は怯え、俺に必死にしがみつく?

「怖かったなぁ、慰めてやるよ」

なんてヒーローごっこは楽しいんだ…!
ヒーロー達が必死こいてなり切ってる意味がわかったよ。
上がりきった俺の口角は下がることを知らなかった。





泣き疲れたのか、俺の腕の中で眠る彼女の白い首筋に指を這わせた。
噛みつきたい衝動に襲われるがグッと堪える。
スーツのまま寝てしまった彼女のスカートから伸びる細い足も、ピシッとしたワイシャツが窮屈そうに感じる胸元も、下半身に集まる熱でどうにかなっちまいそうだ。

でもまだだ、
お前が俺を求めるまで待っててやるから。
さぁ、早く…




持ち前の明るさのおかげか、あの日のことはなかったかのように元気になっていく彼女は、無表情だと言われる俺の横でも楽しそうに過ごす。

そんなアイツに俺はこう言うんだ、

「あまり遅くに出歩くなよ…?暗い道は歩くな。わかるよな…?」

そう注意するんだ。
あの日のことを思い出させるために…忘れるなよ、あの恐怖を…

そうするとお前は顔色を変えて、

「荼毘は…?いつ帰ってくるの?」

俺を必要とする。

「大丈夫だ、いい子にしてたらすぐ帰ってくるよ」

俺がそういうだけで安心するお前は、もう俺なしじゃ無理だろ…?生きていけないよな…?
それでいいんだ、そのまま俺に溺れちまえ。

俺がどんな思いでお前を大事に扱ってきたかわかるか?
力ずくでも泣かしてでもよかったんだ、
鎖に繋いで動けないように、両足を燃やしてやってもよかった。けどそうじゃないんだよ。あいつの中で俺だけが必要になって欲しい、俺だけのあいつになってほしいんだ。

可愛らしい顔も、
脳に響くような甘ったるい声も、
握ったら折れちまいそうな細い首も腕も腰も、
赤い花を咲かした白い肌も、
全部、ぜんぶ、ぜーんぶ俺のものにしないと。
可愛い、好きだ、俺だけのナマエちゃん。
俺と一緒に幸せになろうなぁ、ナマエちゃん。