深夜3時。
外のゴミを回収し終われば、裏にある倉庫へと運んだ。
スタッフとゴミ回収の業者のみが倉庫の鍵を持っている。
廃棄が入ったゴミ箱をホームレスやカラスに荒らされない為にしているのだ。
鍵を開けて、中まで重いゴミを運んだ。
いつもなら先輩がやるはずなのに、今日に限って外にはヤンチャな車が数台停まっていた。
お得意の仮眠に逃げたのだ。
2つ目のゴミ袋を掴み中まで運べば、閉まるドア。
焦って振り向けば、誰かに口を塞がられた。
「こんな所に1人は危ないよ」
そう言って耳元に囁かれる荒い息遣い。
ゴミ袋だらけの倉庫の中で動けぬよう、力ずくで押さえつけられる。
恐怖で震える手足と、ガチガチと鳴る口では叫ぶことも出来ない。
おじさんなのか若者なのかも分からない男は、乱暴に制服のボタンを剥ぎ取る。
抵抗すれば頬を叩かれ、口を押さえつけてた手は首元を掴んだ。
「ずっと、可愛いと思ってたんだ。気持ちよくしてあげたいから暴れちゃダメだよ、殺しちゃうから」
物騒な言葉に涙が溢れる。
ベロリと唇を舐められ、ズボンに手をかけた瞬間開いたドア。
ドアの前には見慣れた姿。
「なにしてんだ」
逆光でよく見えないが、この声は荼毘さんだとわかる。
慌てる痴漢は動けず固まる。
「なぁ、俺が助けたら暴力なんだろ?」
そう言った荼毘さんは、何かを私に投げつけるとドアを閉めたのだ。
慌てていた痴漢も邪魔する気はないと思ったのか、再び私に歩み寄った。
助けに来たと思ったのに、よくわからない言葉を残して去っていった彼の意図が全く分からない。
助かったと思ったのに何も変わってない状況と、彼に裏切られた衝撃で頭の中はパニックだ。
こんなよく分からない状況でも、私を襲おうと思うこの男も相当キテいる。
飛びかかる男に向かって、咄嗟に投げられたソレを突き出した。
男は寸前で止まったと思うと、そのまま倒れ込んできた。
顔や手にかかる生暖かい液体と、手に握られた何かを理解することが出来ず思考は停止する。
「派手にやったな…へぇ、喉ひと突き?」
倒れ込む男を足で退かすと、笑いながら覗き込むように座り込んだ。
強く握られたナイフを、私の手からゆっくりと引き剥がすと適当にそこら辺に投げた。
ドアの向こうからヒョコリと顔を出したMr.さんに、ゆっくりと視線を移す。
「あー、すっげぇ血。可哀想に、怖かったな」
側までくると胸ポケットから出したハンカチで、顔にかかる血を拭った。
「後は俺らがどうにかしてやるから安心してろよ」
荼毘さんの言葉と共に意識を手放した。
目を覚ますと知らない部屋だった。
ここはどこだろうと扉を開けて、話し声のする方へと歩いた。
光の漏れる部屋へと進めば聞きなれた声。
「それで?連れてきたのか?」
「あぁ、荼毘がね。しょうがねぇじゃん、気に入っちまったって聞かねぇんだもん」
「めんどうだから逃がすなよ」
「わかってるって。俺と荼毘には割と懐いてるから平気平気」
聞いてはいけない会話に、心臓はうるさく鳴り冷や汗が背筋を流れる。
ゆっくりと後ずされば背中にトンっと何かに当たった。
「起きたのか?」
そっと肩に置かれた手にビクリと揺れる体。
彼が背後に立つのはこれで何回目だろう。
彼の声に、部屋の中の2人もこちらに気づいたようだ。
「おー、おはよう。だから言ったのに、距離感守んねぇと、って」
コンプレスさんは仮面を外して、苦笑い気味に言った。
「お前は自分の身を守るためにアイツを殺したんだ。何も間違ってないよ」
弔さんの言葉は肯定と共に、殺人を犯したという罪をつきつけた。
「まぁいい。そのうちそんなのどうでもよくなるって」
そう言って笑う荼毘さんの顔はなんだか楽しそうだった。