コンビニ店員と 番外編1

火傷の男性と出会って2日後、もう会うことは無いと思っていたのに突如現れた彼。
レジに立つ私と目が合えばそのまま真っ直ぐこちらに向かってきた。
また何かさせられるのだろうか、と怯む私と見下ろしてくる彼。
黙っているから尚更怖い。
レジのテーブルに投げられたのはお金だった。
初めての時も思ったが、お金は投げるもんじゃない!と教えてやりたくなるがそんなこと彼には言えるはずない。
不思議そうに首を傾げれば

「この間の。返す」

まさか戻ってくると思ってなかった包帯と消毒液と…ホッチキス代…。

「ありがとう、ございま…え!多いですよ!」

よく見たら雑に折られたお札は1万円だった。

「別にいいだろ。有難く貰っとけよ」

「でも…」

「なら、2日間の滞納分ってことで…いいよな?」

押し返されたことが不満なのか、強制的に押し付けられた1万円。

「わ、分かりました…確かに受け取りました」

財布にしまうのもポッケにしまうのもなんだか違う気がして、そのまま握りしめた。
お金も貰ったし、帰るもんだと思っていたのにレジに軽く腰掛けた彼。

(嘘でしょ…帰ってよ…)

背中をこちらに向けながら、ポッケに手を入れて話し出す。

「なぁ…アンタここ長ぇの?」

「え、っと…3年目です…」

「ふーん、楽しい?」

「…楽し、くはないですけど…ラクなんで」

「へぇ」

聞いたくせに大した反応もしてくれないし、そもそもこの会話に意味はあるのかとツッコミたい気持ちを必死で抑えた。
落ち着かなくてずっと握りしめてた1万円を、手先で弄る。
不意に感じた違和感。

雑に折りたたまれてる1万円札は、何かによってくっついてしまっているようだ。
破れないようにそっとくっついている部分を剥がしていけば、べっとりと着いたドス黒い赤。
それが誰かの血液であることは言われなくても理解出来た。

「ひぃぃっ!!」

血液を含んだ札は普段より重そうに、地面へぺたりと落ちた。
それを見た彼は何が面白いのか、ツボにハマったように笑いだした。

「あー、腹痛てぇ」

何が面白いんだと顔をあげれば、また口元から血が。

「…また開いちまった。……なぁ」

「い、い!いやです!!」

その先の言葉は聞きたくないと、遮るように拒絶した。

「まだなんも言ってないだろ?」

「もう拭きませんから!自分でやってください!」

慌てたようにティッシュの箱を彼にグイっと差し出した。
黙った彼は1枚抜き取ると私の目の前に差し出し、屈んで顔を近付けた。

「〜〜〜っ!!」

震える手にティッシュを掴み、顔を背けながら血を拭った。

「っはい!もうこれで終わりですからっ!」

勘弁してくれとパニくる私の手に置かれたナニか。

「これもついでにやってくれよ」

握らされたのはあの時のホッチキス。

「ッギャッ!!」

「ッくっ…ははは!」

大きな口を開けて腹を抱えて笑いだした彼。
さすがの私もカチンと来てしまった。
ホッチキスをテーブルに乱暴に置くと、全力で睨んでやった。

「そう怒んなって」

笑いすぎた彼が、優しい表情で私の頭を撫でた。

「…じゃぁまたな」

そう言うと店を出ていった。