「ねぇ、32歳ってアリ?」
「…はぁ」
届いたおにぎりを何故か一緒に陳列する男性はMr.さんと呼ばれている。
手に取った新作のおにぎりをまじまじと見つめている。
仮面をつけていて表情はわからないが、きっと好みのおにぎりなんだろう。
「それで?アリ?ナシ?」
「…ありっちゃーありですけど…素顔が見れないのはちょっと」
そう答えれば一瞬ピタりと止まったあと
「え!なんで俺だってわかったの!?見たいの?俺の素顔」
自分で聞いといてその反応は、32歳としてどうなのかと言いたくなったが黙っておこう。
「いや、特には興味ないですけど」
「ははは、ドライだなぁー。君って慣れてくるとそんな感じなんだね」
確かに彼らの中でもMr.さんは特に、自然に会話が出来ると納得してしまった。
よく言えば大人の余裕、悪く言えばマイペースでチャラい。
そんな印象の男性だ。
「…まぁ、見せてやらなくもないんだけどねぇ…」
そう言って、最後のおにぎりを私に手渡した。
おにぎりを受け取ろうとすれば、いつの間にか手に乗っていたのはキラキラした可愛らしいチョコレートの包み紙。
「どうぞ、お嬢さん」
「わぁ…ありがとうございます…!」
突然のマジックに感動してしまった私は、キラキラした包み紙にホッコリしてしまった。
「おじさんのこともう少し見てくれたら、コレ取ってあげるよ」
そう言って仮面をトントンと指で叩く。
「無愛想な男もいいけど、紳士な大人の男がいることも忘れずに」
つい彼に夢中になってしまったが、手の中のチョコレートに見覚えが。
「……これうちの商品じゃないですか。いつの間にとったんですか」
「あ、バレた?なーんだ、上手くいったと思ったんだけどなぁ」
「それより、さっきのおにぎり返してください」
「やだよ、美味そうだったんだもん」
そう言って笑って誤魔化すから、この人はやっぱり読めない人だと思った。