「おい、ちんちくりん、早くしろ」
振り向けばレジに突っ立ってる男の人。
名前も知らないその人は、荼毘さんたちの仲間ではあるのだろうけど”まともで失礼“な人だ。
「ちんちくりんじゃありません。はい、130円です」
お金と引き換えに、コーヒーを手渡した。
いつもこの人コーヒーだ。
それ以外を買っていった所を見たことも無いし、他の商品を見ている所も見たことがない。
(あ、そう言えば…)
コーヒーのタダ券をポッケから取り出し、彼に差し出した。
「これ良かったら使ってください」
「……。」
「私コーヒー飲めないので…あ、要りませんでした?」
「…あぁ。貰っとく」
なんか反応がおかしくてチラリと見れば、困ったような、照れたような不思議な表情だった。
「どうかしました?」
「っ…別になんでもない」
そう言って出ていってしまった。
次の日またコーヒーを片手にレジに立つ彼の姿。
いつものようにコーヒーを片手に持ったかと思えば、お菓子コーナーからデザートコーナーにゆっくりと回り始めた。
珍しいこともあるんだとしばらく見つめていれば、こちらに気づいた彼が顎をクイッと動かした。
何となくこちらに来いと呼ばれてる気がして、デザートコーナーに立つ彼の横に並んだ。
「お前のオススメは?」
「オススメ、ですか…?えっと、この新作とか。結構皆さん買っていきますし…でも私的にはこれが好きです。昨日も買って帰りました」
つい熱くなって話し込んでしまった自分にハッとした。
「ふーん…」
私がオススメしたデザートを手に取るとレジに歩き始めた。
(この人もたまには甘いものを食べるんだ…)
新たな一面になんだか嬉しくなりながらお会計を済ませる。袋に詰めようとすれば、コーヒーだけ手に取る彼。
「?これ忘れてますよ」
「それはお前の」
「へ?」
「昨日のお礼。お前それ好きなんだろ?」
いきなりのサプライズになんだか恥ずかしくなってしまった。
「あ、ありがとうございます」
「あー……そうだよな…」
ポリポリと首を掻く彼がボソリと呟いた。
「???」
「言う機会がなかなか無くて、昨日はその言葉が出てこなかったよ……こちらこそありがとう」
「…やっぱりお兄さんはまともな人ですね」
「お兄さんじゃない。弔」
「とむら、さん?」
「…なんでもいい」
「ふふふ、弔さん、また来てくださいね」
少し照れくさそうに目をそらすと店を後にした。