目の前で口説かれている

【爆豪勝己】

少し目を離した隙にナンパされるのは、隙が多いナマエのせいでもある。
苦笑いでやり過ごそうとすること自体が間違ってると、何度言ったらわかるんだ。
ほらな、諦めの悪ぃモブはどんどん勘違いして行く生き物だ。
しばらく眺めてはみたが、特に進展も無ければオチすらない。
大袈裟なため息を落とせば、彼女達の元へと歩いた。
モブとナマエ、ちょうど2人の間になるようにしゃがんでヤンキー座りで見上げる。

「おい、なに愛想笑いしてんだ。相手は隙だらけだぞ。急所狙え、キンタマ蹴り上げろ。脇もガラ空き」

片手を口元に添えて、気張れ。と応援すれば、彼女が呆れたように

「気付いてたなら助けてよ」

と言った。
今度はモブの方へと手を添えて、

「てめぇもやる気あンのか、あ゙?」

理解出来ずポカンと口を開けたままのモブに、鼻で笑って見せる。

「こいつはお前じゃ手に負えねえよ」

そう言って立ち上がれば、ナマエが俺の腕に手を回した。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【轟焦凍】

待ち合わせ時間に少し遅れてしまった。
ゆっくりおいで。と言われたが、待ち合わせの場所まで全力で走る。
目的地はあと少し、の所でチラリと見えた彼女は俯いていた。よく見たら目の前には見知らぬ男に、今にも伸びた手は彼女に触れそうだ。

「俺の彼女に何か用か……?」

すんでのところで掴んだ腕に力が篭もる。
小さな呻き声を掻き消すように、彼女の声が鼓膜に届いた。

「焦凍くんだめ……!」

ハッとして手を離せば、男は慌てたように逃げていった。

「暴力はだめ。…でも助けに来てくれたのにはキュンとした」

困ったように微笑んだ彼女を見て、とにかく何も無く良かったと息を吐いた。

「もう遅刻しねぇから」

「うん。暴力もね?」

「…それは約束できねぇ」

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【切島鋭児郎】

今日はいつもよりも寒かった。
手を擦り寄せる彼女が心配で、近くのお店でホットドリンクを買ってきた。

戻ってくると男性に話しかけられて、彼女の姿は控えめにも困っているように見えた。
買ったばかりのドリンクが零れないように彼女の前に立った。

「すんません!こいつ俺の彼女なんで!」

馬鹿みたいにでかい声でそう言えば、周りを気にした男性は舌打ちをしてどっかに行ってしまった。
俺の後ろに隠れてた彼女が、背中からグッと抱きしめた。

「遅くなってわりぃ」

「ううん、漢らしくてかっこよかったよ」

「おぉ!…ちょ、くっつきすぎじゃね!?」

彼女の柔らかい部分が当たってる。

「ん〜?わざとだよ?」

そう言ってこちらを覗き込んだ俺の彼女はあざとい。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【上鳴電気】

「もしもしどうした?」

待ち合わせ5分前にスマホが鳴った。
もちろん電話の相手は、ナマエだ。
どうやら改札を間違えて出てしまい迷ってるとの事。

「そこ分かりにくいよな、そっち迎えにいくわ。何が見える?…おっけー、じゃぁそこで待っててな」

髪も服もビシッと決まったし、本当ならここは余裕を持って迎えに行きたい。
そう思うのに足元はどんどん歩幅が狭くなって、気付けば小走り。
1人で待たせてたら絶対ナンパされてしまうんだ。
だってあの子は可愛い。
ほらな、見てみろ。
思った通りナンパされてるあの子を発見。

「はいはいはーい、ちょいたんま!!横取りとか良くないよホント!おれがどんだけ頑張って今日デートに誘ったかお兄さん達知らないっしょ!まぢで勘弁してくれよ!3日前から寝れてねぇんだよ、こっちは!これでフラレでもしたらアンタら俺を慰めてくれんのかよ!!」

もっとカッコイイ登場だったはずなのに、心の声が全部でた。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【荼毘】

一仕事終えてアジトに戻ってくれば人の声がした。
男と女の揉めてる声には聞き覚えがあった。
声のする方へと行けば、掴まれて迫られてる女はやっぱりナマエだった。

静かに歩み寄れば、背後に立った俺の気配にも気が付かない男。
こんな奴が俺たちの部下だなんて、何かあった時の縦にもなれないんだと呆れてしまった。
男の肩に腕を回して組めば、驚いた男は間抜けな顔でこちらを振り返った。

「おいおい、本当にこいつでいいのか?」

「…ッ、へ?」

「チンコ咥えながらケツの穴にバイブ入れられて喜んでるような淫乱女だぜ?お前で満足させる自信はあるのかよ」

そう言うと俺とナマエを交互に見たあと、真っ青な顔して逃げていった。

「なんだアイツ、根性ねぇな……で?お前はなんで泣いてんの?」

覗き込めば睨まれた。

「私とあんたがいつヤッたのよっ…!!」

「…お前ってそーいう性癖の女だろ?」

飛んできた平手打ちを交わせば、ローキックしてきやがった。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【死柄木弔】

“俺の隣にいること。周りの奴らが何を言おうと、ここでのルールは俺”
耳にタコが出来るほど、ナマエには教えこんでいるはずだった。
それなのに彼女と来たら、今日もまた平気でどこかへ消えてしまったらしい。
本日、何度目かのため息にはもう飽きた。
何分待っても、何時間待っても戻ってこない。
そろそろ我慢の限界だ。

探しに行こうとドアを開ければ、すぐそばで知らない奴と話し込む姿が目に付いた。

「おい、いい加減にしろよ」

相手の男が振り向く間もなく、掴んだ首元から粉々に消えてなくなった。
それにすら驚きもしないナマエは、俺を見ると悪戯に笑った。

「…何ヘラヘラしてんだよ」

「んーん?弔が可愛いなと思って」

「バカにしてんのか?」

「ううん。だってヤキモチ妬いてくれてたんでしょ?」

「妬くかよ」

「ふふふ、やっぱり可愛い。ねぇ、弔。私はどこにも行かないよ」

つま先立ちして伸びてきた手を見て、嫌なはずなのに少しだけ合わすように屈んでやった。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【Mr.コンプレス(迫圧紘)】

「おい、あれいいのかよ」

スピナーが指をさすのは、彼女にしつこく話しかけてる下っ端くん。
もちろん名前なんて知らないが、ココ最近彼女の傍にいることが目につくのは確かだ。

だからって、俺の彼女が相手にする訳が無い。
今だってあの子はスマホに夢中。
スピナーが心配になるのは分かるが、ここは余裕を持って見届けるのが大人の男ってもんだ。

そう思った瞬間、下っ端の男は彼女のスマホを取り上げた。
ハッとして彼女が悲しそうな顔をするから、いても立っても居られなくなった。

すかさず男の片手に触れ圧縮すれば、声にならない叫び声がその場に響いた。
個性を解除してスマホを抜き取り、切断された手首を男の口へと突っ込んだ。

「急いで病院行けば今ならくっつくかもな?ついでにそのおしゃべりな口も縫ってもらえよ」

そう言えば、男は慌てて走り去って行った。

「ありがと」

「どういたしまして。無視もいいけど、たまには抵抗してね?」

「…心配になっちゃった?」

「まぁね。すました顔してるけどおじさん内心ヒヤヒヤだからね」

「そんなおじさんが私は好きなんだけど」

そうやってまた夢中にさせる。