マッチングアプリ

【爆豪勝己】

何となく始めたマッチングアプリ。
イマイチ使い方が分かっていない間に、この爆豪と言う彼に会うことになってしまった。
プロフィール画像は彼の横顔で、誰かが撮った物に違いない。
その横顔はとても綺麗で、こんな人が私に会ってくれるのかと不安になった。
会ったら壺でも買わされるんじゃないかと、予定の3日前から胃がキリキリと痛んだ。

カフェで待ち合わせして登場した彼は、画像そのまま。
いや、実物の方がもっとイケメンだった。
だが、何故か眉間に寄せられた皺にこちらまで移りそうだった。
メッセのやり取りはあんなに優しかったのに、実際の彼はとても無愛想だった。

「あの、つまんなそうなんで帰ります?」

「…帰らねぇ」

「…だったらもう少し楽しそうにしたらどうです?」

「あ゙ぁ?……いや、わりぃ…」

プロフィール画像にまんまと吊られた私が言えたことじゃないけど、こっちは真面目に彼氏候補を探しに来てるんだ。
帰ろうと話せば帰らないと言われ、それなら話をしようと言えば会話は続かない。
我慢していたため息が無意識に出てしまった。

「……わりぃ。気分悪くさせたなら謝る。その…なんだ…ツレに、騙されて登録したんだわ」

ぽつりぽつりと彼が話し出したのは、アプリを始めるきっかけだった。

「それなら退会でもすればよかったのに…」

「しようと思ったわ。けど…アンタのこと気になってやめらんなかったんだ」

予告無しの突然の告白に、心臓はバクバク飛び出しそうだ。
顔も身体も全部が熱くなって、何だか泣きそうになる。

「最初からやり直しさせてくれ。連れていきてぇ所あんだわ」

真っ直ぐこちらを見て彼が言うから、頷くことしか出来なかった。

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【切島鋭児郎】

彼と出会ったのはマッチングアプリ。
硬派な彼がデートの開口一番に「実はダチに登録させられて」と申し訳なさそうに言ったのを思い出す。
そんなことわざわざ言わなくてもいいのに、ちゃんと伝えてくれた彼に好意を抱いたのが第一印象だった。

今日は5回目のデートだ。
相変わらず緊張してる彼は手を繋げば汗でびっしょりだし、じーっと見つめると照れたように目をそらす。
もう成人して暫く経つのに、学生気分を味あわせてくれるのだ。

「わりぃ、待った?」

「ううん、大丈夫。さっき来たところ」

「そっか。なら行こうぜ、今日会わせたい奴らいるんだ」

「よく話してくれるお友達?」

「そそ。そ、それでさ…お前のこと彼女って紹介、したいんだけど……俺の彼女になって、くれねぇ?」

どこまでも不器用な彼に笑ってしまって、返事の前に「やっと言ってくれた」と言ってしまえば彼は驚いていた。

待ち合わせ場所まで移動していく車内で、これから会う友達の話を聞いていた。
真面目な彼のことだから、キスなんてまだまだ先のことだろうと会話もうわの空。
外の景色を見ながら適当に相槌を打てば、信号で車がゆっくりと止まった。
トントンと手を指先で叩かれて、彼の方を向けば目の前に真っ赤な彼の色。
そっと離れた唇に、息を吸うのも忘れていた。

「わりぃ、すげーしたかった」

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【上鳴電気】

「なぁ、なんで俺だけいい子当たんないの。まぢなんなの、本当」

1人でやるのもアレだし、どうせなら独り身のかっちゃんと切島も巻き込んだ。
嫌がる2人に無理やりマッチングアプリさせたはずなのに、気付けば俺だけ1人だった。

なぜ?なんで?いつの間に?
2人とも1人目でいい子当たりすぎじゃない?
俺に来るメッセなんて【かっこいいですね!絶対彼女いますよね!】とか【なんか女の子の扱い慣れすぎてませんか?軽い人はごめんなさい】とか。
みんな逆に失礼くない?俺軽くないからね!?
褒められて嬉しいはずなのに、このヤリ捨てられた感は何?
暴力反対だよマジで!!

5分前に来たメッセなんて【幸せになりたいですか?】となんかのアドレス。
もはや怖ぇぇよ!

タイミングよく来たマッチングアプリの通知に、大袈裟なため息が零れた。
はい、はい。どうせまた言い逃げしたメッセでしょ?壺なんて買わねぇし、宗教なんて興味ないんですよ。

【趣味が合いそうだなって思いました。よかったらメッセからでも始めませんか?】

「ッッッッしゃぁぁぁぁー!!!」

夜中の1時過ぎ、ベッドの上でガッツポーズした。

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【死柄木弔】

弔くんと言う人とマッチングアプリで知り合った。
プロフィール画像も無いし、自分のことをあまり話さない人だった。
最初こそ警戒したが、話していくほど彼は悪い人なんかじゃないかと思わせたのは、優しくて【良い人】だったから。
待ち合わせ場所まで来れば、後ろから肩をトントンと叩かれた。

「弔…くん?」

「そう。初めまして」

ニンマリと笑った彼はフードを深く被っている。
覗き込んだがハッキリと顔は分からない。
それでも不審に思わなかったのは、彼の声が心地よかったから。

「連れていきたい所があるんだ、いい?」

「うん、いいよ。どんな所?」

「そうだなぁ…少し暗いけど雰囲気は悪くないかな」

ちらりと見える横顔が気になって、どんどん彼に惹かれていった。
連れていかれたのは暗い狭い路地裏。
気付いた時には遅くて、フードを脱いだ彼がこちらを嬉しそうに見下ろした。

「へぇ…近くで見るとほんと可愛いんだなぁ」

掻きむしった皮膚に、冷たい目。
喉の奥がヒュっと鳴る。

「ダメだよなぁ…気を付けないと…イカれた奴だったらどうするんだよ……あぁイカれたって俺みたいなやつの事か」

ケタケタと笑っている。

「ご、め…なさ…」

ガタガタと震える私の唇に、彼の冷たい指先が触れる。

「でもさ、こうやって拒否出来ない所とか、怯える顔とか、全てが可愛くてしょうがないんだよなぁ」

そう言って私の名前をゆっくりと耳元で呼んだ。

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【荼毘】

カフェで待ち合わせして、とりあえずお互いコーヒーを頼んだはいいのだけど、この人まったく喋らない。
失礼なんだけど、相槌っていう相槌も上手いわけではないから、私がただただ独り言を話しているみたいだ。

「え、っと…気に入らなかったら、すぐにでも解散でもいいんですけど…」

こんなこと言いたくなかったけど、私もそろそろこの雰囲気に限界だ。
オドオドしながらもそう伝えれば「アンタがいいから俺は来たんだけど」そう真顔で言われてしまった。
ならばとこの後どうするか、どこ行きたいか。
全力でその場を盛り上げようとすれば彼は鼻で笑った。

「な、何笑ってるんですか!?」

「…いや、アンタが必死だからさ」

クックと喉を鳴らして、今だにまだ笑ってる。
恥ずかしさとイラつきで目の前のアイスコーヒーをズズズと、ストローで飲み干した。

「なぁ」

頬杖ついた彼が真っ直ぐこちらを見て言った。

「俺はアンタが気に入ったんだ。実際に会って確信したよ……アンタは?」

「、は?……そんな…まだ、わかんない…」

「なら相性ってやつ確認しにいこうぜ」

「え?どこに」

腕を掴まれ立たされ、カフェを出るのと同時に手を絡ませてきた。
突然の恋人繋ぎに、顔を真っ赤にした私を見て

「照れるとそんな顔すんだなぁ…もっといい顔見せてくれよ…?」

そう言って歩き出した。

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【Mr.コンプレス】

よく分からない仮面にシルクハット。
プロフィール欄にはマジシャンの1文字。

「何この人、変なの〜」

特に深い意味はなかったが、中身が見てみたい気持ちと少しの興味に反応ボタンを押した。
5分も立たないうちにメッセが届き、そこから彼と連絡を取り合うようになった。
下心のないメッセに、初デートを迎えるまでがあっという間だった。

彼が指定したカフェに行けば、スマホが震えた。
【右奥見て】
言う通りそちらへと視線を移せば、1人の男性が控えめに手を振っていた。

「は、初めまして」

想像の斜め上を行く、顔面の良さと高身長。

「初めまして、ナマエちゃん。もしかして、緊張してる?」

少し困ったように笑った眉が印象的で、それ以上はまともに直視出来なかった。
緊張してしまった私の為に、色々な話題をふってはリラックスさせようとしてくれた。

「そういえば、マジシャンって」

「あぁ、そう。しがないマジシャンです。特別に何かやろうか」

そう言うと彼が私のスマホを指さした。

「これ使っていい?」

「スマホですか?いいですけど、壊さないでくださいね!ソレ無くなったら私生きていけないので」

なんて冗談を言えば、彼が目を細めて笑った。
彼の笑顔に何だかゾクリと寒気を感じた瞬間、目の前のスマホが消え、代わりに出てきたのは青緑の球体だった。

「っ、!」

焦る私と、その様子を楽しそうに微笑む彼。
テーブルに置かれた球体に手を伸ばそうとすれば、目の前で彼が奪い去ってしまった。

「これそんなに大事?」

「当たり前でしょ!返してください」

「ヤダって言ったら?」

「…ぇ」

「ナマエちゃんが、この後も付き合ってくれるなら考えてあげてもいいよ」

怪しく笑う彼を目の前に、血の気が引いていく。