くっついちゃうからあっちにいって

【死柄木弔】

今日に限って弔がしつこい。

「なぁ、なに急いでんだよ」

「よ、用事があるんだって、だから早くしてくれない?!」

バレる前にここから離れないと、と焦れば焦るほど目の前の彼は眉をしかめる。
個性事故に巻き込まれたなんて言ったら、どうなるかわからない。
笑われるならまだいい、苛立って首なんて掻き毟り始めたらそれこそ面倒だ。
少しずつ後ずさるように距離をおけば、彼の腕が私の腕を掴んだ。
思ったよりも引く力が強すぎて、思わず彼の体に寄り添うように傾いた。

「あ…」

「は?…」

いつもなら弔に引き止められるなんてドキドキして堪らないはずなのに、今の私には最悪のシチュエーションだった。
異変に気づいた弔も暫く黙った後に、ギロリと私を見下ろした。

「なにがどうなってるんだよ」

「…ごめんね」

「面倒なことに巻き込まれてるならハッキリ言えって」

耳元で彼の声がする。

「腕も足もくっついてんのか、これ ……あーイライラする」

そういった彼を見てヤバいと焦るが、その後に「触れない」と呟いた彼の言葉は聞き間違えなんかじゃない。
まさかの展開に、心臓が今にも飛び出しそうになった。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【荼毘】

「悪かったな」

そんな事微塵も思っていないであろう荼毘が、少しの距離を取って私を見つめる。

「それで?今の気分は?」

ほら。言ってる側から馬鹿にしたように笑ってる。

「あんたがあそこで避けなかったら当たってなかったのに」

「知らねぇよ。避けなかったお前がどんくせェだけ」

悔しいけどその通りなわけで、何も言えなくてそっぽ向いた。
荼毘なんか放っておいて、自分の手のひらを眺めた。
触れたもの、ってことは手で触らなかったらセーフ…?
それとも私の体に触れたもの全て…?
暫くどう生活して行こうか…なんて考えてたら、目の前の手のひらは彼の手のひらと重なった。
突然の恋人繋ぎにトキメク訳もなく、ハッとして顔を上げた。

目の前にはとても楽しそうな荼毘の顔があって、冗談にしてはタチが悪すぎる。
なんだかヤバいその雰囲気に、寒気までしてきた。

「なぁ、これで俺が個性使ったらどうなんの?」

一瞬にして頭に過ぎるのは最悪な結末。
言葉が出てこなくて、ただただ必死で首を横に振った。

「その顔…煽ってるようにしか見えないぜ?」

未だ触れていない私の指先まで包み込めば、さらに強い力でギュッと握った。
歪んだ恋人繋ぎに絶句する私を見て、彼が楽しそうに笑った。

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【Mr.コンプレス】

一仕事終えてアジトに帰ってきたら、何だか奥が騒がしい。
またトゥワイスが騒いでるのか。それともトガちゃんか?
元気があるのは何よりだけど、こうも毎日騒がしいとおじさん疲れちまうよ。
そんな呑気なことを考えつつ角を曲がれば、なにかとぶつかった。

「きゃっ!」

「お、っと!…ナマエちゃんか。大丈夫?」

体で受け止めて、両手を上へ。
これぐらい大袈裟にしておかないと、後々セクハラなんだのってうるさい奴らがいるんだ。

そんな俺の気遣いなんか知らないこの子は、未だに抱きついたまま。
さすがの俺だってちょい焦る。

「若い子に抱きつかれるのは嬉しいんだけど…そろそろ離れ

「ごめん、ミスター」

遮るように彼女が言ったが、残念ながら俺からじゃその表情は見えない。
少し遅れて現れたトゥワイス達に事情を聞けば、彼女が謝った理由を理解した。

「おじさんでごめんな〜」

自虐っぽく謝れば、彼女は大丈夫だと呟いて耳まで真っ赤に染めた。

そんな俺たちをただただ黙って見つめる誰かさんが、面白くなさそうに俺を睨みつける。
いい歳して大人気ないけど、今回はどう見ても俺の勝ちだろう。
そんな思いを込めて、ニヤリと笑って見せた。