奥さんにして

【爆豪勝己】

「おー、任せろ」

「あ、うん」

一世一代の告白が。プロポーズが。一瞬で終わってしまった。
あれ、もっと感動するものじゃないの?
それとも「俺より先に言うな」ってムキになるもんじゃないの?
少女漫画の見すぎだろうか。
勝己の返事的にOKなのは間違いなさそうだけど、あまりにも軽すぎた。
何度も目をパチクリさせる私に、勝己の手元の雑誌は閉ざされた。

「なんてマヌケな顔しとんだ」

「…いや、呆気ないなぁーって」

「てめぇは昔っからそればっかだったからな」

「え!は、初めて言ったし!」

「覚えてねーだけだろ。ガキん時、泣いて慰めてやる度俺と結婚する言ってたろ」

そんな小さい頃の事なんて、と思い出してみれば微かに思い出す記憶たち。

な?とドヤ顔の勝己。
ということは、その延長で捉えてるって事になる。
恥ずかしさと悔しさでごちゃごちゃになった心の中が、視界を歪ます。

「それはそれでしょ…っ、今度は、本気だからっ」

こんな可愛くない言い方で伝えるつもりじゃなかったのに。

「知っとるわ。昔も今も俺の気持ちは変わんねーんだよアホ」

グッと抱き寄せられて勝己の胸元におでこを押し付けた。

「黙って俺の嫁になることだけ考えてろや」

꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【瀬呂範太】

「それお前から言っちゃう?」

少し困ったように笑った。

「だって、言いたかったんだもん」

唇を尖らせて不貞腐れれば頭を優しく撫でられた。

「来週記念日だったろ?その時に言おうと思って色々用意してたのにぃ〜」

そう言いながら立ち上がった範太が、棚の引き出しから小さな箱を取りだした。
見なくても何かなんてすぐわかる。
嬉しくて涙は一気に溢れるし、珍しく照れてる範太が私の後ろに座り直した。
後ろから抱きしめられるように左手を支えた。

「もう付ける?それとも来週の記念日まで待つ?」

「…もう付けだい゙」

「ははは、はいよ」

するりと嵌められた指輪が左手の薬指で光る。

「奥さんになりたいって言い出すのとか。俺たちのタイミングバッチリなのな」

「ふふ、そうだね」

涙を指先で掬うと、おでこをくっつけ合った。

「そしたら来週どうする?プロポーズしとく?」

ふざけたようにそう言うから

「うーん、そうだなぁ。来週は違う指輪くれるんでしょ?」

「いや待って、それ結構いい値段するからね」

お互い笑った。

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【死柄木弔】

珍しくポカンとマヌケ顔の弔くん。
今スマホを構えて写メでも撮ったら怒られるだろうか。
それにしても、そんなに変なこと言っただろうか。

「聞こえなかった?もう1回言おうか?」

「いや、いい。聞こえてる」

それなら喜ぶとか嫌がるとか、なんか反応してくれないと。
こっちは結構本気で言ったのになぁ…なんて残念そうに見つめていれば目が合った。

「お前、もの好きだな」

「…?そうかな、弔くん結構人気あると思うよ。超常解放戦線の女子から特に」

「それはヴィランとしてだろ。お前はどうなんだって」

「私…?私、は…人として、弔くんの事好きだなぁ…って」

まさか聞かれると思ってなくて、改めて自分の気持ちを言葉にしたらなんだか恥ずかしくなってしまった。
奥さんにして、なんてとんでもないことを言った事に今更慌てた。

「なんで急に照れてんの」

「これは違っ…!」

言い返そうと顔を上げて彼を見たら、同じように真っ赤になった顔。

「好きみたい、です」

そう言ったら手引かれて彼の腕の中。

「言質とったからな、忘れんなよ」

私に見られないように誤魔化して抱きしめてるけど、彼の鼓動がすごい伝わってきた。

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【荼毘】

「…お前を嫁に貰ってなんかいい事あんの?」

真顔で聞いてきた荼毘。
呆れるかバカにしたように笑って返されると思ってたのに、真顔は正直キツい。

「それで?なんかねーの?」

「え、っと…ご飯作ってあげれるよ」

「それぐらい誰でも出来るだろ」

そうだった。
彼は意外にも身の回りの事を自分で出来るタイプだった。

「お裁縫、とか…手先が器用だよ」

「地味だなァ」

「うぅ…」

「おいおい、大丈夫かよ。じゃぁ俺を旦那にしたい理由はなんだよ」

「まずは強いとこでしょ!あとかっこいいしスタイルもいい!無愛想だけど本当は優しくて」

本人を目の前にして興奮するように喋りだした私は、我に返り恥ずかしくなった。

「へぇ、お前にとってそんなイイ男なのかよ」

スマホをテーブルに置くと、向かい合わせに膝に座るよう抱き上げられた。

「嬉しいなァ。だけどもっと大事なこと忘れてねぇか」

腰に回った手がいやらしく撫でる。

「えっ、ちが上手……?」

「冗談だろ。俺とお前の相性が良い…だろ?最初からそう言えよ」

ニヤリと笑うから、荼毘は意地悪だ、そう言った。

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【Mr.コンプレス(迫圧紘)】

「ねぇ、圧紘さんの奥さんにして?」

「んぇ、急にどうしたの。こんな若くて可愛らしい子が奥さんって、俺は嬉しいけどみんなに殺されちまうよ」

そう言ってニッコリ笑う。
可愛らしい子なんて恋愛対象として見れないお子ちゃま、そう遠回しで言っているようなもんだ。

「ごまかさないで、私は本気だよ。それとも私みたいな子供は嫌い?」

「いやそんなまさか。…嬉しいけどな?嬉しいんだけど、おじさんこんなだから」

彼が指をさしたのは義手の左手。

「迷惑かけちまうって。五体満足が1番だよ」

そう言って右手で柔らかく私の頭を撫でる。
我慢してたはずの涙はポロポロと零れていく。

「それでも嬉しいよ、ありがとう」

そうじゃない、そんな顔させたくて言ったんじゃない。
彼の左手を取って頬に寄せた。

「この手も全部、圧紘さんが好きなの…だから…っ」

言いかけたところを彼に遮られた。
触れるだけの唇がそっと離れていく。

「ごめん、レディにこんな顔させちゃいけなかったよな」

今度は眉を下げて照れたように笑うから、お返しに私からキスをした。


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【スピナー】

「ばっ、か!お前……!」

思っていた通りだった。
真っ赤な顔して驚いて、その後大きな声で怒ったように困ったように馬鹿だと言うこと。

「馬鹿じゃないよ、本気だもん。それとも私じゃだめ?誰か他に好きな人でもいるの?」

それとも、と続けようとすれば少し乱暴にスマホをテーブルに置いた音がした。

「っ、お前も知ってんだろ。俺なんかと結婚して子供でも産まれたら…」

それ以上の言葉の続きを彼は敢えて口に出さなかった。
いや、出せなかったのかもしれない。
彼が今まで世間から受けてきた差別を、自分の子供にまで背負わせたくはなかったのだろう。

「なんで“俺なんか”なんて言うの。そんな“俺なんか”を好きになった“私”はこの先どうすればいい?」

責めるつもりはなかったが、いい機会だ。
言いたいことはすべてぶちまけて、全てを認めた彼と一緒に幸せになりたいと思う。
だって私たちの未来は明るいから。

「そのために戦ってるんでしょ?今度は私たちが幸せになる番」

そう言ったら彼がグッと引き寄せて、強く抱き締めてくれるからあぁ、幸せだ。
そう思った。