バレンタイン

【爆豪勝己】

「勝己、はい」

紙袋を手渡すと、ソレを受け取った彼からも紙袋が手渡された。

「…?」

「あ?てめぇが来年は交換にしようって言ったンだろうが」

そんなこと言ったと、ここで初めて思い出した。
毎年のお返しがあまりにも豪華すぎて、申し訳ない気持ちでいっぱいだったのだ。

「そうだった、はは」

笑った私に彼はため息をついた。
早速袋から取り出してテーブルの上に広げれば、彼も同じようにした。

「おいひぃー」

「そうかよ」

「食べる?はい」

彼の作ったであろうソレを、口元へと差し出した。
要らねぇ、と拒む彼にしつこく差し出した結果、私の指ごとパクリと咥えこんでしまった。
真っ赤になる私を他所に「お前が作ったやつのほうがうめぇ」と言って、私の手作りチョコを自分の唇に挟んだ。

「ん」

照れもしない彼が、じっと私を見てチョコを挟んだ唇を突き出す。
彼の肩に手を添えて跨るように膝立ちをすれば、腰を回ってくる手。
唇同士がくっつきそうな、ギリギリの所を掠めてチョコを受け取れば、彼がバカにしたように笑った。

「ハッ。ビビりすぎ」


꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【轟焦凍】

「ありがとうな」

毎年変わらず、彼は少し照れつつも嬉しそうにお礼を言う。
早速取り出したチョコを手に取ると、しばらく眺めたあと口に運ぶのだ。

「うめぇ」

そう呟くと黙々と食べ続けるのも毎年恒例。
本人曰く、本当に美味しいから止まらないそうだ。
残りの一粒になるまで気付かず、もうこれしかねぇのか。と悲しそうな彼を見る度、来年はもう少し量を増やそうと思う。

「今年のお返しは、俺が決めてもいいか?」

「?うん、珍しいね」

いつもなら彼は何が欲しいと聞いてくるはずだったのに、今年はそこだけ少し違うみたいだ。
正直、毎年お返しを考える手間も一苦労だったのでちょうど良かったと笑えば、彼が何か決心したように微笑んだ。

「楽しみにしててくれ」


꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳

【荼毘】

「意外とオンナノコなんだな」

チョコを受け取った荼毘は、"女の子"のフレーズだけ強調するように言った。

「嫌味っぽ…」

「なんだよ、何期待してたんだ?」

「…別に」

私の方をチラリと見れば、鼻で笑って一つのチョコを取り出した。
乱暴に包装紙を剥がしたのを横目で見て、あぁ高かったのに。と心の中で呟いた。

「甘ったる」

せっかく選んだソレに対しての、破壊力の高い一言。
頼まれても無ければ、期待されてすらなかったソレの労力だってわかって欲しい。
なんだか虚しくなってきて、段々と項垂れる私を彼が覗き込んだ。
そのままキスされたかと思えば、容赦なく舌が入ってきた。

「…ちょうどいいな」

そう言って満足そうに舌なめずりする彼を、ぼんやりと見つめるしか出来ない。
その後、荼毘は1粒食べる毎にキスをして、私はそれを受け入れた。
気付いた頃には空っぽの箱と、その気になってしまった私。

「続きはホワイトデーな」

頭を少し雑に撫でた後、ニヤリと笑って部屋を出ていった。