【爆豪勝己】
「…そうかよ」
怒って言い返すかと思ったのに、立ち上がるとそのまま仕事に出かけてしまった勝己。
不貞腐る子供を宥め、気分転換に出掛けると街中でヴィランが暴れていた。
最悪の現場に居合わせてしまったと、慌てて子を抱えて逃げるも衝撃に巻き込まれて倒れ込んでしまった。
少し遠くでヒーローらしき人達が駆けつけたのを見れば、我が子にそちらに走れと背中を押した。
だが、泣きじゃくって私から離れようとしない。
巨大化したヴィランはヒーローが駆けつけたことにより、更に暴れているようだ。
怖くてギュッと子を抱きしめて目を瞑れば、腕の中の子供が大きな声で勝己のヒーロー名を叫んだ。
「だ、いなまいと!助けて、ママが!!だいなまいと!!」
すると視界がぼんやりと暗くなり、聞き覚えのある声がした。
「俺が来た」
ニヤリと笑った彼は、安堵した私達を見たあとヴィランへと向かって行った。
あっという間にヴィランを倒してしまったダイナマイトに、子供が駆け寄るとなんの躊躇いもなく抱きかかえた。
「きらいなんて言ってごめんね、パパ。だいすきだよ」
そう言うと目元のマスクをクイッと持ち上げたダイナマイトが、子供の頬に軽くキスを落とした。
その日のニュース速報は、ヴィラン撃破よりも子供にキスを落とす彼の写真が一面を飾った。
꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳
【轟焦凍】
「そうか…」
キョトンとして表情はあまりいつもと変わらない。
が、片手に持ったコーヒーは口の前でダラダラと零れているし、新聞は上下逆。
相当なダメージを負ったらしい。
子供は家を飛び出して学校に行ってしまった。
なんて声をかければいいか分からず、心配そうに見つめていると突然立ち上がった。
テーブルのスマホで誰かに電話をかけ始めると、ベランダの外まで出てしまった。
回らない頭のせいか、少しだけ閉め忘れたベランダのドアから声がする。
「……親父か…?急に悪ぃ。……今までされてきた事すぐには許せねぇかもしれねぇが…今まで悪かった。父親の立場になって初めて理解した……。我が子に嫌いだって言われるのはこんなに辛ぇんだな……」
スっと耳元から離したスマホからは、彼の名を叫ぶ声がする。
学校から帰ってきた子供は、朝のことなどスッカリ忘れて焦凍にベッタリと抱きついた。
「パパだーいすき」
その一言だけで、焦凍も嬉しそうだ。
꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳
【切島鋭児郎】
大きな声で叫んだ子供は自室へと逃げてしまった。
「おぉ…いつか言われると思ってたけど…結構来るな」
苦笑いで乱暴に閉められたドアを見つめている。
これが女の子だったら相当凹んでるだろうなぁ、と苦笑いした。
落ち着くようにと温かいお茶を差し出せば、考え事か盛大にこぼしてしまう始末。
「難しいなぁー」
ガシガシと頭を搔く鋭児郎。
「しょうがないよ。今はまだその言葉でしか表現出来ないんだよ」
そういった私に、数秒遅れで「…お前も言われるのか?」と呟いた。
その問いにうーんと悩み、たまにね?と言えば少しだけムッとした鋭児郎は子ども部屋へと歩いていった。
ドアの前にドカッと胡座をかいて座り込むと、深呼吸を2度3度繰り返した。
「父ちゃんが悪かった、ごめん!お前のこと分かってる気でいた」
反応がないドアの向こうの息子へと、話し始めた。
すると暫くしてドアが開き、息子が泣きそうな顔で出てきた。
「俺もごめん、父ちゃん仲直りしよう」
そういう息子を抱きしめると
「これだけは約束してくれ。かぁちゃんには嫌いなんか言わないこと」
そう言ってくれるから、こっちまで涙ぐんでしまう。