今年も一人で誕生日を過ごした。来年で40代を迎えるなんて笑えない。
いつでも心は10代を掲げてきたが、今となっては落ち着きが無いだけにも思えた。

生涯独り身とか寂しすぎる。でも俺なんてただのサラリーマンだし。
仕事終わりで混雑し始めた駅前のコンビニに入り、缶ビールを一本手に取ってレジの最後尾に並んだ。
そんな俺に陰ができたのでちらりと後ろを覗き見れば、白スーツに細身の男が立っていた。白スーツとか……ホストか?
目線を少し上にずらして、顔を盗み見る。

「……四木?」
「…………?」
「あ、高校で三年間同じクラスだったみょうじ」
「……眼鏡じゃない方のみょうじ」
「それ!池に落ちた方!」

本当に四木だった。
そう知ると、そう言えば四木ってこんなんだったな、と思う。なんと言うか、雰囲気が四木そのものだ。
四木は成績はいいのに授業にはあまり出ていなかった。そのせいか、三年間同じクラスと言っても実際共に授業を受けたのは二年間くらいだと思う。

「四木も仕事終わり?」
「ええ、まぁ」

やけに丁寧な口調で返され、言葉に詰まる。この歳にもなれば、むしろ敬語で話すべきなのか?
そう思案していれば、空いた隣のレジから声がかかった。缶ビールをレジに置けば、四木は店員に煙草を頼んでいる。
一緒に払えと言っているのかと思ったら、既に青いトレーには一万円が置かれていた。
四木はバーコードの通された煙草をさっさと手にしてお釣りを受け取っている。

「あ、外でたら缶ビール代払う」
「それぐらい別に構わないですよ。並んでるんで、さっさと行きましょう」

後ろに並んでいたはずの四木を追うようにして外に出れば、彼は胸ポケットに煙草をしまっているところだった。

「ほんとにお金いいの?」
「金に困っているわけじゃあないんでね」
「まじかよ。すげぇ、四木から誕生日プレゼント貰っちゃった」
「誕生日?」
「そう、俺昨日で39。来年は40歳とか考えられないよ」

視線をこちらに寄越して聞いてきた四木にそう答える。
ほんと、時間ってあっという間だ。
気づいたら長期休暇が無くなってて、気づいたら自分が誰かに物を教える立場になっていた。
心は10代と謳えど、体力は圧倒的に衰えてしまっている。俺、老けたなぁ。

「でも四木って、結構俺のこと覚えてくれてるのな」
「ええ、自分でも驚くくらいには」
「一回だけ前後ろの席になったことあったよな。あんたが後ろでさ。四木、消しゴム貸してくれた」
「それ、たぶん私じゃあ無いですよ」
「え! えー、じゃあプリント届けてくれたのは?」
「私がそんな事を?」

訝しげに四木に目を細められてしまい、今までの記憶が曖昧になる。
思い出補正、というやつなのだろうか。
四木曰く、自分から話しかけたことは無いが、俺が何かとうるさかったらしい。

「缶ビールじゃ味気ないでしょう。一杯おごります」

誕生日の事を言っていると理解するのに少し時間がかかった。

「消しゴム貸してくれない四木がそんな事するの?」
「嫌なら別に。あと、消しゴムの貸し借りは人違いですよ」
「ぜひお願いします!」

俺は、最近缶ビールしか飲んでないんだと、先ほどのコンビニのビニール袋をチラつかせた。

結果的に、連れられたのは地上から一階下にある小さなバーだった。
四木に何の仕事をしているのかと尋ね、ヤクザだと返された酔っ払いの俺は腹が痛くなるほど笑った。勢いで連絡先も交換した。
しかし、週一ペースで小学生の女の子の流行り物を聞いてくるのはどうかと思う。ネットで最近の小学生の実態を垣間見て、ジェネレーションギャップに唸るのは結構辛いものがあるんだからな。




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