少女漫画みたいな出会いだった。
探してた本にやっと出会えて、取ろうとしたら運命の人と手が重なっちゃうやつ。
俺よりも下に手を置いた彼は、最近アニメ化されたから読みたかったがどこを探しても在庫切れだったのだ、と軽い口調で話して見せた。なので俺はこの作者の処女作からのファンだと嘘偽りなく伝え、本を買う権利を奪い取ったのだった。



「みょうじ君はラノベとかは読まないんすか?」

ちっともロマンチックじゃなかった出会いは30分前に終わっている。なぜかレジまで彼と会話が続き、会計が終わる頃には俺が本好きで遊馬崎さんがオタクだという事が相互理解として成り立っていた。

「ラノベ、は読んだことないですね。失礼な話、表紙で手が引っ込んじゃって」
「えええ!もったいないっすよ!普段ラノベを読まない人からでも評価されるようなラノベはいっぱいあるんすよ!」

特徴的な糸目を険しくさせる遊馬崎さんとは、既に名前だけの自己紹介を終えている。
遊馬崎さんの名前を聞いたときに思わず聞き返すと、ハーフなんすよ!と答えられたけど納得はしてない。
でも、結構いい人なんじゃなかろうか。服装も俺の好きな感じだし。

「手当たり次第本屋回って全滅とか、どうしたモンっすかねぇ」
「なんかすみません」
「ええっ、みょうじ君が謝ることじゃないっすよ! 俺の力不足っすから」

そう言いながらも遊馬崎さんはどこか落ち着かない様子だ。真のオタクともなるとやっぱり原作も気になるのかな。でも、こうやって俺の好きな作者さんに興味を持ってもらえるのは嬉しいかもしれない。でも全滅って言ってたし。

「あ」
「?」
「ここの一本裏の通りにある本屋、行きました?」
「え、たぶん存在自体知らないっす。え!」
「人は少ないですけど、売り切れちゃうような本置いてあったりして、穴場なんですよ」
「まじ、すか……」
「まじっす」

彼の口調を真似てみれば、嬉しそうに笑ってくれた。



「あったああああああ!!」

案内した本屋で目当ての本を見つけた遊馬崎さんの声は大きかった。
本を頭上よりも高く上げて見せるものだから笑ってしまう。

「みょうじ君には感謝しきれないっす……。あ!よかったら今度おすすめのラノベ紹介するっすよ!」
「え、本当ですか?じゃあお願いしようかな」

連絡先を交換しあって、お互いにその場を後にする。
一週間後、遊馬崎さんに青看板のオタク御用達ショップに連れていかれるのはまた別の話だ。




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