※エレメンツより前に書いたので完全に捏造の五奇人時代渉



「成る程、貴方があの天祥院英智の…」

 突然人の前に立ち塞がり、何処か冷めた表情で此方を見つめるこの男。長い水色の髪にアメジストのような瞳を持つ彼は、五奇人と呼ばれる異端児集団の一人、名前は確かーーー。

「…日々樹、渉」
「おや、私の名前をご存知でしたか」
「そりゃあ、有名な五奇人の一人だし」

 それだけでなく、英智からも多少聞いていたから知らない筈がない。
 生徒会に反抗する愚かで面倒な生徒達だと、彼は言っていた。確かに、見た目で判断するのはあまり良くないけど、相手にすると大変面倒そうな雰囲気を醸し出している。これは早急に何とかしてこの場から立ち去らねばならない。春香はなるべく穏便に終わらせようと、用件を聞くことにした。

「それで、何か私に用?急いでるんだけど」
「おっと、これは失礼。実は少し面白いことを私、思いつきましてね」

 面白いこと、その言葉に春香は嫌な予感を全身に感じた。いきなり人に近づいて来て、馴れ馴れしく声を掛けてきた時点で怪しいとは思っていたけど。まさか、私が英智の幼馴染だから目を付けたのか。
 それを確信づけたのは、次に放たれた彼の台詞だった。


「貴方に傷を付けたら、天下の皇帝陛下はどんな反応をするのでしょうかねぇ?」

 くつくつと愉悦そうな声と同時に、日々樹は春香の頬に手を伸ばす。そっと触れる手は冷たく、春香は体を強張せた。これから何をされるのか、瞬時に察知するも時は既に遅し。腕を強く掴まれ、後ろの壁に押さえつけられてしまった。
 キッ、と強く睨みつけるが、日々樹には全く効果がない。それどころか彼は愉しげな表情で春香を舐め回すように見下ろしていた。

「っ…!」
「ああ、暴れては駄目ですよ。酷いようにされたくはないでしょう?」

 大人しくしていて下さいね。そう言って日々樹は、手慣れた手つきで彼女のセーターを上にたくし上げてシャツのボタンを一つ一つ外していく。スッと開いたシャツの隙間から桃色の下着が大胆に姿を見せる。

「ほう、可愛らしい下着ですね。あの天祥院英智の趣味ですか?」
「あ、あんたに関係ない……っ!」
「ふむ、そうですか。しかし邪魔ですね…取り外してしまいましょう」

 最も容易く取り上げられた下着の下からは、高校生とは思えぬ大きさの胸部が露出され、春香は思わず羞恥心で顔が熱くなる。英智以外の男に自分の身体を見られた、それだけで泣きそうになる。
 だが目の前の男は、気に留めることなくむき出しにされた春香の胸を掌で強く鷲掴んだ。かと思えば、感触を確かめるように優しく揉み始める。

「随分と良い反応をしますね。胸が弱いのですか?」
「ちがっ…ひっ、ぁあ…!」

 突然胸の先端を親指と人指し指で挟むように強く摘まれ、身体中にびりびりと電気が走るような感覚に覆われる。それを何度も繰り返し執念に弄られて、耐えきれなくなったのか、閉じられていた春香の唇からどんどんと喘ぎ声が漏れていった。
 自分のものとは思えない甘い声と、不本意に与えられる快感から必死に逃げようと春香は身じろぐが、阻止するように日々樹の右膝が彼女の太ももの間に割って入ってくる。お陰で身動き一つ取れない態勢になってしまい、大人しくなる春香の様子に日々樹はふふっと笑った。

「まだまだお楽しみはこれからですよ」
「!や、そこは…!」

 するりと胸から下の方へ移動された手は、素早くスカートの中へと浸入してくる。そしてタイツの上から下着越しに、指の腹ですりすりと敏感な場所を擦りつける。ゴツゴツとした感触が当たる度に快楽の波が押し寄せてきて、春香はびくびくと身体を震えさせた。
 こんなの、英智じゃないのに、不快な筈なのに。何故自分はこんなにも淫らに感じているんだろう。気持ち悪い、嫌だ。助けて。自分が自分でなくなりそうな恐怖から、ぐすぐすと嗚咽する春香を更に追い詰めようと、指が下着の中へ入り込もうとする。もう駄目だと、ぎゅっと目を瞑り悟った瞬間だった。

 ぴたりと、日々樹の手が止まる。同時にバタバタと此方に向かって来る一人分の足音が、春香の耳に届いた。この足音は、もしかして。

「……やれやれ、どうやらお迎えが来てしまったようですね」

 残念です。と、心底つまらなそうな表情で日々樹はふんと鼻を鳴らし、春香から離れる。解放されて力の抜けた春香の身体は、ずるずると壁に沿うように降りて、そのままぺたんと床に座り込んだ。

「では、私はこれで失礼します。少し惜しいですが、中々に楽しめましたよ」
「ま、待っ……!」

 言葉を遮るように爽風と立ち去る彼を、追いかけようとするが。力の抜けた身体では立つ事すら不可能で、ただ後ろ姿を見送るだけしか春香には出来なかった。





五奇人の恐ろしさ
(150925)
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