お昼ご飯のカレーを沖矢さんと一緒に作っていると、奴は出た。

沖矢さんの背後で動き回るそいつ。
それをたまたま目に入れてしまった私は、どうする事も出来ず見過ごすしかなかった。
奴はその後何事も無かったかのように沖矢さんから離れ、キッチンの奥へと消える。近くから離れただけでも良しとしよう。

カレーを食べ終わり、余った分は隣におすそ分けしに行きますと沖矢さんは工藤邸から出て行った。
私はキッチンの洗い場を綺麗にしていると、また奴が出た。

そう、黒い奴。G……ゴキだ。

名前を全て言うのすら恐ろしい。
ヴォルデモートよりも恐ろしい。
長い触覚をふよふよさせて、あんな動きをするなんて。
壁を這い回るそいつに注意しつつ、流しの水を止める。
近くにあったまな板を両手で持ち、臨戦態勢に入った。

大丈夫、相手小さい。私大きい。

ソロソロと奴に近寄る。奴はまだ私に気づいてはいないよう。

後は叩き潰せば……。

しかし、問題は起こった。
奴が私の方目掛け猛突進してきたのだ。


「ぎゃあああぁああ!!!!!」


騎士団の一員と言えど、Gは嫌いです。

思わず魔法を使って宙に浮いてしまい、そのまま身体が硬直したまま数分。
猛突進してきたGは今は私のすぐ真下にいて、私が魔法を解いて降りようものなら俺に触れるぞと言わんばかりに私の真下にいる。
やめてくれどこか行けよ。嘘やっぱ嘘そのまま外へ出て行け。

そうしていると玄関の戸が開き、沖矢さんが帰ってきた。
まな板を持って宙に浮かんでいる私と私の真下にいるGを交互に見ている。
いや見てないで助けてください。


「名前さん?」

「いや……ハハ……おかえりなさい…」

「まな板振り上げての状態でおかえりなさいとは、初めての経験です」

「……私も初めてですよ……」

「どうしたんですか?」

「あっ!沖矢さんあの!私の足元に今奴が……!!」

「……あぁ……」


あぁ……って気づいてたでしょうが!!


数分後、ティッシュ片手に沖矢さんがGを丸め込みました。やはり男性の方は強かった……。
でもホー……って言いながらティッシュでG仕留める沖矢さんはなんかちょっと新鮮だったな。面白かった。


「ところで名前さん…?いつ降りるんです?」

「あ、いや……その……実は魔法を咄嗟にかけたものですから他の人が私に触れない限り降りれない魔法をかけてしまったようでして………」

「……ようでして?」

「……助けてください沖矢さん……」


くつくつと喉を鳴らす沖矢さんがかっこよすぎて顔が熱くなるが、まな板を振り上げてそのまま空中でストップしている姿を見て笑っているのかと思うと恥ずかしさと腹立たしさがある。

喉で笑うのかっこいいね!!
喉の奥でくつくついうのすんごい好き!!沖矢さんかっこいい!!


「かっこいいですか……悪くないですね、良いでしょう」

「何で聞こえて……!?」

「喉で笑うのかっこいいねあたりから聞こえてましたよ?」

「あぁああ!!!」


そう言ってまた喉で笑いながら私を抱えた沖矢さん。
沖矢さんに触られるのが嬉しいなんて思ったのは、きっと気の迷いだ。


まな板は無事回収されました。
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奴が出た