「だーかーらー!私の言う事を信じれば!事件も未然に防げるのよ!!」
やめなさいド阿呆。
なんて言える訳もなく。
私は今日もキッチンにこもってお茶とお菓子出し役です。
ではなく、安室さんのお手伝いです。
次の日、目暮警部達の制止も振り切って、ここに来たという彼女。
一体その精神力はどこから来るのか逆に知りたい。
今日はポアロで安室さんに何かを訴えています。
何だか清々しくなってきました。
私は梓ちゃんとお皿洗いしてます。相手しなくてすごい楽。
カウンター席でコナン君と隣同士で座って、何やら訴えております。
コナン君わざわざ彼女の後をついてきたのね偉い。でももう目が死んでいます。こっち来るかい?
安室さんも上手くかわしてはいるが、面倒くささを隠すのを捨て去る直前まで来ている。おいいつものトリプルフェイスはどうした。
「分かりましたよ。とりあえずさぁこれでも食べて落ち着いて」
「いらないー!安室さんに信じてもらえればいいのー!」
安室さんが差し出したハムサンドを彼女は至極迷惑とばかりに机の横にはね飛ばした。
あああぁああぁああ安室さんのあむサンドがぁあああ!!!!
「ああぁぁいらないなら私もーらい!!!」
平静を装いながら私はカウンター席へと身体を乗り出し、あむサンドが机から落ちる前に死守する。
だけど文頭にああぁあなんて酷く叫んだものだから、安室さんや梓ちゃんにはびっくりされてコナン君に至っては苦笑いだ。
それでもいいや、安室さんのあむサンドを捨てるとは。これうまいんだぞ最後の晩餐のメニューに加えてもいいくらいうまいんだぞ。
あぁ危ない安室さんお手製のあむサンドを捨てるなど貴様、おっといけない。
彼女はまたお前かと睨んできたが、この際気にしない。あむサンドを蔑ろにする奴は許さん。
これは言っても良いよね。
「貴女、食べ物は粗末にしてはいけませんよ?」
「何よ、私は食べに来たんじゃないの!」
「ならここにいる意味は余計無いのでは?少なくとも安室さんが食べて欲しいなと思って作ってくださったものです。それを目の前で捨てられたらどう思いますか?」
「っ……」
「……!」
あぁめっちゃ歯軋りしてる。何だろう目つけられたかな。やだなぁ面倒事は人間ダイ〇ン探偵だけで十分だよ。
何か隣にいる安室さんもびっくりしてるけどどうしたんでしょうか。とりあえず私はコナン君を救出しますね。
「とりあえず安室さん私これ食べてきます!コナン君も食べる?」
「あ、僕も食べたいなぁ!名前さん連れてって!!」
梓ちゃん安室さんごめんなさい。コナン君がこのままじゃ死にそうな顔してたから連れ出します。
私はあむサンドを持ち出しコナン君の手を引き、奥の控え室へと入った。
「……コナン君お疲れ様…」
「やめろ……名前さんもね……」
「ありがとう。サンドイッチ食べよう?元気出るよ?」
「ハ〇のおむすびかよ……」
私とコナン君は安室さんお手製あむサンドを食べた。うん。やっぱりおいしい。
コナン君の目が生き返ってきたのに安堵しながら、コナン君の頭を撫でる。
少し眉間に皺を寄せられたけれど、目を気持ち良さそうに細められたし何も言われなかったから、止めなくても大丈夫だと確信した。
あむサンドを食べ終わり、そのままコナン君を撫でていると扉が開き、安室さんが入ってきた。すごくお疲れのようで。
「あ、お疲れ様安室さん。サンドイッチ頂きました」
「あぁ、構わないよ」
やはり安室さんが一番目が死んでいる。
あの後ストッパーがいなくなった事でより調子が乗ったのかな彼女。怖ぇ。
隣に座った安室さんを、コナン君と同じように撫でる。
綺麗な金髪を絡まない程度にくしゃくしゃとかき混ぜ、優しく撫でた。
「名前さん…」
「ごめんなさい、でも疲れてそうだったから。私にできる事はこれしかないけれど……」
「……いいえ、大丈夫ですありがとうございます……」
「う、うぉあ?!」
安室さんに腰を抱かれ、右肩に顔を乗せられた。心臓が痛いよ。
サラサラと安室さんの髪の毛が首筋や肩に触れ、くすぐったい。
コナン君もいつの間にか私の膝の上に頭を乗せていて、膝枕になっていた。
私は彼らの頭を撫でる手を止め、今度はぽんぽんと軽く頭を手のひらで叩き、ゆっくりと撫でた。
まるで子どもをあやしているそれに、普段の彼らなら反抗をするのだが、それをする事すらもできないほど今は彼女に疲れていたようだ。
「……名前さん」
「どうしました安室さん」
「先程のサンドイッチ……ありがとうございました……嬉しいです」
「あ、いや、あれは、その、反射的に言ってしまって……」
腰を一層強く抱かれ、甘えるように頭を擦り寄せられた。
なにこれ安室さんかわいすぎない??
サンドイッチ一つ救出しただけでこれとかご褒美が贅沢すぎて私萌え死にそうだなぁと思っていたら、いつの間にか二人は寝ていた。
寝る程にまで疲れてたのね……。
私は彼らを優しく撫で続け、祈る。
故郷の日本で習った言霊の魔法を少しだけ使い、言葉に魔法を乗せる。
頑張るあなた達に、少しでも安らぎを。
小声で言ったその言葉は、キラキラとした粉となり、彼らの身体に吸い込まれると消えた。
二人の顔を覗き込めば、先程よりかは眉間の皺も無くなり、安らかだった。
(……!寝てしまった……!)
(おはようございます安室さん)
(名前さん……、あれ…!?)
(おーコナン君もおはよう。いい寝顔だったよ二人共ごちそうさま)
((……))
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