目障りな女がいる。
目が真っ赤な以外は何一つとして特徴も美しい点も無い女が、私の好きな人達の近くにいる。
まるでそこの位置が当たり前という風に、特に美しくも可愛らしくもない笑顔を振りまいて、私の好きな人達に媚を売っている。
私の方が、彼らの事を何倍も知っていて愛しているというのに。
私が知っている"コナン"には彼女はいなかったから、きっとそこら辺のモブだろう。
今は彼らに雇われていて、いつかしたら役立たずで捨てられるに違いない。
その代わり私は知っている。
彼らの事をたくさん知っている。
きっと私を放ってはおかないであろう。守るに違いない。
あぁ、彼らはいつになったら私のナイトになるのかしら?
*
「では、僕はお先に失礼します」
「お疲れ様安室さん」
「お疲れ様ー」
今日は安室さんが早く上がり、私と梓ちゃんのみになった。
テーブル席とカウンター席にはあまり人がおらず、一人でも大丈夫だと梓ちゃんを休憩しに行かせた。
流しが溜まってきたから、皿洗いを始める。
「こんにちは名前?さん?」
「……!こんにちは」
声をかけられそちらへ振り向けば、彼女がいた。
カウンター席に座り、優雅に頬杖をついている。
若い子らしくパステルカラーの可愛らしいブラウスにふんわりとしたスカートを着ていた。
若い子は良いなぁと私は呑気に考える。
お冷を用意し、彼女の前に置こうと少し身を乗り出す。
と、
「ねぇ、何故貴女みたいなのが安室さんや赤井さんの隣にいるの?」
手首を掴まれ、グイと引かれた。そのまま耳元でボソリと呟かれ、背筋が寒くなる。
「安室さんは分かりますが、赤井さんとは一体誰の事です……?」
私はあくまで知らない一般人を装う。
妙に勘ぐられて面倒臭い事になっても嫌だから。
「まぁそこは知らなくて良いわ…そうね、安室さんと沖矢さん、と言っておこうかしら」
「特に故意に近づいた訳ではありませんよ。成り行きでああなりました」
「嘘つかないでちょうだいよ。あの人達にタダで近づけるとでも?」
「そのタダで近づけたのは私ですが?」
「っ……!」
彼女はあくまで何故近くにいるのか、というのを聞いているだけのようだ。危険ではないな。
刃物のような鋭さを含めた彼女の言葉を、スルスルと遊ぶように避ける。
騎士団の頃が蘇ってしまい、答え方が煽るような風になってしまった。
これは完全に調子に乗ってしまった。
あ、と気づいた頃にはまるで挑発してるような態度になってしまっていて、
「あ、ごめんなさい、そういうつもりじゃなかったんです」
「……そう、貴女は私を敵視してるのね?」
「……?何故そのような風に……?」
まさかの解釈の仕方に驚いていると、彼女はフンと得意そうに鼻で笑った。
「私には分かるの!何でも知ってる私が羨ましくて妬んでいるんでしょう!?」
「……?」
「まぁいいわ!でも私は許していないんだから!私じゃなくて貴女なんかが彼らの隣にいるなんて!!絶対に後悔させてやる!」
そう言って彼女は何をするかと思えば、私が先程出したお冷を私の顔面めがけ掛けた。氷が冷てぇし痛ぇ。
わぁお……なにこれリアル"いじめ"……?その内廊下で家庭から出た生ゴミ掛けてくるのかな??
突然の事にほうけていると、気づけば彼女は立ち去っていた。
……とりあえず着替えなきゃ。
こういった嫌な事があると立て続けに起こるもので。
コナン君と沖矢さんがお店に来やがりました。
「い、いらっしゃいませ……えへへ」
「名前さん!?どうしたの!?」
「いやぁお冷こぼしちゃって…大丈夫だよ、注文は何にしますか?」
上手くごまかせたは不安だが、こう言う他無い。
「名前さん、これを」
沖矢さんがハンカチを一枚渡してくれた。何と優しい殿方。
「あ、ありがとうございます」
沖矢さん臭に包まれたハンカチで顔を拭く。あぁ何このご褒美。めっちゃ幸せ。
赤井さんと沖矢さんで匂い違うんだすごいなぁ、あぁいい匂いやばい。
ニヤけそうになるのを抑え、髪の毛や腕、首を拭いていく。
さすがに服の中は拭けなかったので、そこら辺で終わりにしといた。
「ハンカチありがとうございます。洗って返しますね」
「服の中は良いんですか?風邪を引いてしまいますよ?」
「え"」
「名前さん…!?」
休憩から帰ってきた梓ちゃんに見つかり、私はそのまま着替えも兼ねて休憩になりました。
だけど、
「何で貴方達もいるんですか…」
「早く拭かないといけませんよ」
「おおおあおあお沖矢さん!?」
沖矢さんが良い笑顔でボタン外してきます。やめてくれ見た目年齢とはいえ小学生もいるんだぞ。
「ココココココナン君 Help me !!」
「無理だよ名前さん…」
顔を赤く染めそっぽを向くコナン君。
いやそこは止めようよ全力で立ち向かおうよお姉さん大変なんだよ。
沖矢さんとの攻防を繰り広げ、コナン君が側で頭を抱える。その光景を見ていたのは……。
「可哀想な赤井さん……あんな女の相手をさせられて……」
双眼鏡片手にビルの屋上にいる彼女。
窓から中を憎らしげに覗き、ギリと歯ぎしりをする。
「ああでも大丈夫……きっと私が助け出してあげるから……」
自分の今の状況、立場に酔いしれうっとりと恍惚そうに呟く彼女。
その目には沖矢しか映っておらず、それ以外は何者も映さない。
堕ちる所まで堕ちた少女。
そこに救いはあるのだろうか。
To be continued……?
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