な に が 起 こ っ た 。
第一がこれだ。なぜ今私はヒロアカの世界にトリップー!みたいな状況に陥ってるんだ。私は三次元、ヒロアカは二次元。そもそも次元が違う。
某青いネコ型ロボットに頼まない限りこんな自体には陥らない。
それに……。
「なんで今よりによって今トリップ?させるかな……新しい歌作らないといけないのに……ぽいよ生誕祭に間に合わない……。」
そう、私は、昨日近日中に控えていたUTAU音源の松田っぽいよの生誕祭のために、彼の音源で歌を作っていたのだ。
リズムなどは大方決まり、後は詩をつけ肉付けをして、声を乗せて……とやる事は多々あったのに、今この摩訶不思議な状況のせいで全てパーのパーだ。
三度の飯よりアニメとUTAUと漫画が好きなのに、誰だこんな事した奴は。
シバくぞ。
「とりあえずここはどこなんだよ……雄英高の前に立たされても私ここの人じゃない……。」
「マスター。」
「……!!!!!??」
聞き間違えるはずがない。
毎日聴いて、いじくり回してきた声。
クールながら優しげな中低音。
少しだけ機械じみているのは、彼は本来立体になって、三次元に、現れないからだ。
ゆっくり振り返ると、目の前にはやはり松田っぽいよが立っていた。
「マスター、俺、分かる?」
「あ、あ"ぁうあ、ぽいよ……ぽいよ……。」
「……?マスター……頭おかしくなったのかヨ……?」
まるで中途半端なアルビノのような、赤目と透き通った肌に、水色の髪の先に走る白のメッシュ。
相変わらず気だるげな目からはやる気が感じられないし、今だって既にもう面倒くささ1000%loveだ。
ても目の前に、ぽいよがいる。いつもはパソコンの中にしかいなくて、触れる事すら叶わないのに。今目の前に、こうして触れる。
「ぽ、ぽいよ……なでても良い……?」
「……ハ?」
「マ、マスターのお願い聞いてください!!」
「……仕方ねーナ……。」
ん、と頭を屈めて、なでやすいようにしてくれる。そのまま手のひらでふわりとぽいよの髪の毛をなでてみれば、ものすごくやばかった。
なにがやばいってもうなにもかもやばい。そのままデレデレしてぽいよの頭を抱きすくめてしまった。ぽいよは照れて逃げたよ。かわいいかよ。
「そんな事よリ……マスター、事故に巻き込んで悪かったヨ……。」
「……?事故……?」
「?マスター……まさか事故のショックでなにが起こったか分からないのか……?」
「んー、そうかも……。なんでここにいるのか分からないし、その前の記憶も分かんないや……。」
「まじかヨ……。」
目の前で頭を抱えしゃがみ込んでしまうぽいよ。
事故ってなんだろう。
「マスターごめん……悪気はなかったんだヨ……ただついちょっと……気になって……。」
「???ぽいよ落ち着いて?とりあえずなにも怒らないから話して?」
かわいいかわいいぽいよの事だ。きっとなにが理由があったに違いない。
「ほんとに……つい気になって……。」
「うん。」
と、伏し目がちに頭を項垂れ、しゃがみこんだぽいよに合わせるように私も身体をしゃがめる。
なだめるように背中をさすれば、ポツポツとぽいよは話し始めた。
私が作っていたぽいよ生誕祭のための歌。
実はそれをぽいよは少しだけいじってしまったのだ。
けれど本人曰くそれは故意ではなく、興味本位でパソコンを開いたらはずみで事故り、いじくってしまう形になってしまったらしい。
そしてそのいじくった拍子に、私が部屋の中に入ってきた。
ぽいよは反射的に自身の体内の電源をシャットダウンして、パソコンごと電源を落とそうとしたらしい。
そうしたらなぜか私も巻き込みシャットダウンしてしまい、そしてなぜかこうして別世界にいる。
ぽいよはものすごく反省しており、私の目の前でしょぼんとしながら話していた。
正直飛ばされた世界がヒロアカの世界だから私から言ったらご褒美以外の何者でもない。
それなら、
「大丈夫だよぽいよ。私はなんともないし、一度は行ってみたかった世界に行けたんだもん!ぽいよのおかげだよ!だから怒ってない!よ!」
「マスター……。」
「わ、わわ!」
立ち上がって両手を広げ、大丈夫と言ってみれば、ぽいよは赤い目を少しだけ潤ませて私に抱きついてきた。
なんだこれご褒美かよかわいい。
「ぽいよどうしたのー……かわいいなぁ。」
「かわいくネーヨ……。」
ごめん、ありがとう。とぽいよは固く私を抱きしめてくる。あぁかわいい。
「とりあえず……ここでしばらく暮らさなきゃならねーのか……?」
「……そうだね、住まいとかどうしよっ……。」
「名字。」
突如割り込んできた低い男性の声。
私とぽいよが顔を上げると、目の前には見覚えのある顔がいた。
「名字。五分の遅れだ。時間は有限。早く行動しろ。」
「え、あの、あ、え、」
「聞いてるのか。それと松田爽汰、お前クラスに遅れるぞ。」
「……ハ?」
私達を不機嫌そうにこちらを見下ろしたその男。私は知っている。私は知っているぞ。
あなた、相澤先生ですね。
けれどなぜ。
「おい、おっさん。」
「誰がおっさんだ松田。お前俺のクラスのくせに怠けているとは感心するな。」
「え、ふぁ、は!?」
「なんだ名字」
今すごい聞き捨てならない事を聞いた気がするよ!?
トリップしてきたのは良い。ものすごく良い。けれどさ。
ぽいよが1-Aの生徒ってどういう事じゃ!!?
私は生徒じゃないの!?
back少女と歌人