泣き言は奥底に押し込んで




──理解が追いつかなかった。

目の前の魔物をわたしは知らない。今いるこのだだっ広い平原がどこなのかもわからなくて、混乱した頭では、上手く状況が把握出来ない。そもそもなんでこんなところにいるのだろう、それも1人で。わからなくて、奥歯を噛んだ。みんなは、無事でいるだろうか。正面の小さな魔物はたぶん強くはないけど、ひとりで相手をするには少し数が多い。どこかで落としたのか武器もなくて、何故だか精霊術も発動しない。本当に、いったい、何が起きているんだろう。わからなすぎて、泣きそうだ。だけどだからといって、こんな魔物にこのままやられてしまうわけにもいかなくて。腹を括って、記憶の中の優等生のように拳を構えた。
──あぁ、もう、こんなときあの人が居たら。

そこまで考えて、小さく息を吐く。今ここに、あの人は、居ない。どんなに考えたってそれは変えられない事実。そんな泣き言はこの戦闘が終わってからだ。
唇の内側を噛んで、駆け出した。

理解が、追いつかなかった。どうしてわたしは戦ってるんだろう。ジルニトラから落ちた筈のわたしが、なんで。そもそもこんな魔物は見たことがない。たとえ逃げる選択をしたとして、地形のわからないこの場所でもっと強い魔物に出会ってしまえば今よりもずっと不利になる。もう八方塞がりで、半ば自棄になって掌を叩き込めば後方から攻撃を受けて吹き飛ばされた。

「──蒼破ッ!」

知らない声が聞こえて、技が魔物に当たるのを見た。受け身を取った勢いのまま起き上がり、ぐるりと辺りを見回す。声も技も、違う。有り得ないとわかっていながら、それでもわたしはあの人の姿を探していた。




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花ひらく頃、想いこがれる