私には誰にも言えない秘密がある。
私の趣味を理解してくれるただひとり、親友である忍を除いてクラスメイトにも先生にも、家族にも言えないような秘密がある。

それは、
「忍、おはよ〜。」
「良子ちゃん、おはよう。今日も最高に気持ち悪いね。なんで息をしてるの?環境に悪いから早く止めてよ。お花がかわいそうだよ!」
「ご、ごめん」
朝から人が聞いたら驚くような罵詈雑言を並びたててさりげなく足を踵でぎゅうと踏んできたのが、親友・兼良き理解者の里川忍。
可愛らしく中性的な顔立ちとは裏腹に、とてつもないサド気質を秘めた計算高い少年だ。
彼は息をするようにさらりとあることないこと罵りなじってくれる。
え?「くれる」という表現はおかしい?
いやいやいや。何を隠そうこれが私の秘密であり、趣味であり、性癖なのだ。

___私は所謂、

「早く歩けよドマゾ女。お前がいくら短足だからって僕に合わせるくらいできるだろ?どんだけ無能なわけ?」
「だって忍足速いから、」
「良子ちゃんの声って不快なんだよね。黙って歩けないなんて無能どころじゃないよ。アメーバでさえ声を発したりしないのに」
「あっ、まって、忍」

最っ高…………


___マゾヒストなのだから。

忍も私も自分の性癖は暴露していない。だから人前ではふたりとも皮を被っていきている。
人にいえない趣味の利害一致によりこの相互関係がなりたったいるけど、別に付き合っているわけで無いし、互いに恋愛対象としてなど見ていない。
飽くまで主人と家畜_あ、この表現いいね。_の関係なのだ。

といっても、肉体的なマゾヒスティックな願望が強いわけではない_せいぜい足を踏まれたり程度までだ_からその筋の人からみたら似非マゾなのだろうけど。




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