01小説のタイトル

名も知らない草に咲く、一茎の花は、無条件に美しいものである。日の光りに照らされて、鮮紅に、心臓のごとく戦おののくのを見ても、また微風に吹かれて、羞はじらうごとく揺らぐのを見ても、かぎりない、美しさがその中に見出されるであろう。
 思うに、見出そうとすれば、美は、この地上のどんなところにも存在する。たゞ見る人が謙虚にして、それに対して考うるだけの至誠があれば足りるものだ。凡そ、そこには、子供と成人の区別すらないにちがいない。
 真に、美しいもの、また正しいものは、いつでも、無条件にそうあるのであって、それは、理窟などから、遙かに超越する。そして、直ちに、人間の感情に迫るのである。
青空文庫より 小川未明『名もなき草』
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