ベッドで咳き込みながら、重い瞼を持ち上げた。
視界一面に広がるのは、綺麗なコバルトグリーンの髪。覗き込んでいる顔は心配そうに眉が下がっていた。
「ベルナルド、移っちゃうよ。」いつも通りに言ったつもりの言葉は思いの外擦れていて「大丈夫かい?」と余計にベルナルドに心配かけてしまう。

「ごめんね、心配かけて。」
「ハニーは病人なんだから、こういう時くらいは俺を頼ってくれていいんだよ。」

髪を撫でられて片目を瞑る。食欲はある?と聞かれて私は頷いた。
上半身をゆっくり起こして水を飲む。喉に潤いが戻るけれど一瞬にしてカラカラと乾いた状態になってしまい、やはり苦しい。
ベルナルドが手に持っている皿を見れば、リゾーニにオリーブオイルと塩を足したシンプルなもの。風邪の時によく食べる奴だ。
ベルナルドが湯気が立つ程の温かそうなリゾーニをスプーンに掬って、ふうふうと息を吹き掛ける。眼鏡が曇っているのも気にせずに。それを見てまさか、と自分の口元が引きつるのを感じた。
「はい、あーん。」スプーンを口元に差し出しながらベルナルドは笑う。
いい大人があーん?!目を瞬かせて何を言っているの?とベルナルドとスプーンを交互に見た。
「ほら、口開けて?」ベルナルドが滅多に無い猫なで声で囁くものだから、私は真っ赤になりながら渋々と口を開けた。

皿が空になるまでそれが続き、リゾーニを食べ終わった後は風邪とは違う意味でぐったりしていた。
薬を飲み、怠くて横になる。するとすぐに眠気が襲ってきて。左手でベルナルドの手を握ると握り返してくれた。

「ねぇベルナルド、お願いがあるの。」
「何だい?」

こんなことを言うのも、風邪にかかって人肌か恋しくなった所為だ。
ベルナルドは少し驚いたように見開いて、すぐに笑った。

「愛してるよ。―ゆっくりおやすみ。」

ベルナルドは私の額にキスを落とす。ああ、なんだか白馬の王子様のように見える自分はもう駄目なのかもしれないわ。
左手に宿る温かい熱は私を安心させてくれて、意識は段々と薄れていった。


こんな日がたまにはあってもいいかも知れないと思いつつ、この風邪が治ったらいつも通りになるから。今日だけは貴方に甘えさせて、ね。
2010.02.13