久しぶりにぐっすり眠れたなぁ、と思って枕元の時計に手を伸ばした。その時刻を見た瞬間、わたしはピシッと凍り付いた。
「ね、寝坊した!」
「んんっ、え……、どうしたんだいハニー?」
隣で寝ていたベルナルドもわたしと同じく爆睡していたみたいで、わたしの叫び声にゆっくりと身体を起こして眠そうな声を出す。わたしは時計をベルナルドの目の前に持ってきて見せた。そうしたらベルナルドの眠そうな目が時刻を見て覚醒していき、徐々に目を見開いた。
「寝坊よ寝坊…!」
「まさか、こんな時間まで寝ていたなんて。」
急いでわたしたちはベッドから降りて支度を急ぐ。わたしは昨夜放り投げた下着を回収し、ベルナルドはサイドテーブルに置いてある眼鏡を掛けてクロゼットから取り出したスーツに袖を通す。
「なんで目覚まし切れてるの?!」
「そりゃ俺だって分からないよ。いつの間にか止めてたんじゃないのかな。」
「ベルナルドが?」
「いや、ハニーが。」
「いやいや、ベルナルドが止めたんでしょう?」
はっきりと結論も出ない言い合いをしながらリビングに着く。そしてベルナルドは部下へ連絡、わたしは簡単な朝食を作るため迅速に行動を開始した。
トーストをテーブルに並べ、ついでにコーヒーを作る。暫くしてベルナルドが戻ってきて椅子に腰を下ろし、コーヒーを一飲みして息を吐いた。
「まあ俺がいなくても仕事は部下に任せて、回るようにしているしな、大丈夫だと…思いたいよ。」
「そうね、たまにはこんな風に部下が頑張ってもらうのもいいかもね。そんなに心配しても…ベルナルドの前髪に影響するだけだわ。」
「…ハニー!」
食事をした後、起きた時とは真逆、テンポを落としてのんびりとした様子で動く。そしてベルナルドご自慢のアルファロメオに乗ってデイバンホテルに向かった。
「よォお二人さん、ボンジョルノ。」
ベルナルドの仕事部屋の扉を開けると、ルキーノが端にあるソファーに座って優雅にコーヒーを飲んでいた。
「「ルキーノ?!」」
「ハハッ、息ぴったりだな。」
「どう、したんだ?」
「重役出勤のお二人さんの顔を見にな。……いや、領収書を渡しに、だ。」
ぴらぴらと紙を見せる。用件は本当にそれだけだったのだろう、ルキーノは立ち上がってベルナルドにその紙を渡すと部屋から出ていく。
「昨日は大変だったみたいだな。年の割にベルナルドは激しいのか?」
「なッ…!」
ルキーノはすれ違うときに笑いながらわたしに耳打ちをした。
な、なんで?顔を真っ赤にしたまま急いで鏡のところへ向かうと、首筋にはキスマーク。
「ベルナルドのバカ!ルキーノにバレたじゃない!」
「まさかハニー、気付いてなかったのかい?」
「起きたときは忙しかったんだから、気付くわけ無いでしょ!あぁもう穴に入りたい!」
「いや、みんな気付いてるから大丈夫だよ。なぁ?」
「は、はい。そうですね。」
ベルナルドが問い掛けたのは朝からベルナルドの代わりに仕事をしていた部下だった。
今更ながら彼の部下に気付いたわたしは泣きたくなった。
2010.04.03