この地に訪れるのも数年ぶりだった。久しぶりにこの土を踏むが、以前尋ねた時とうって代わり、人の手が多く加わっているような印象を受けた。あんなにも寂れて閑散としていたのに、今ではコミュニティを形成している。
 ホームステッドのアキレスの家に行くまでの道すがら、何人もの此処で生活をしているであろう人たちに遠くからじろじろと見られていたのだ。コミュニティ間の繋がりは強いのだろうと感じるが、身を潜めて行動しているアサシンとしては居心地が非常に悪かった。(個人的には忍び込んでもいいのだが、そこまでする必要はないと思っている。)
奥まったところに見慣れた建物。一度しか来たことがないくせに涙が溢れそうな懐かしさを感じた。
 無意識に手に力が籠った。その所為かどうか分からないが、ガンガンとまるで殴るようにドアを叩いてしまった。少し背筋が冷えるのは、敵襲かと思われて警戒されてしまうのではないかという考えが浮かんだからだ。頬が引き攣るのを感じながら、名前は両手を挙げてホールドアップした状態で扉が開くのを待つ。

「誰だ」
 扉が開くと同時に唸るような低い声が聞こえ、気がつけば喉元には目印のトマホークが突きつけられていた。名前は先程まで脳裏に浮かんでいた(記憶にある彼の幼い)姿が、そのまま成長し大人になったような感じに口許が緩む。誰だかすぐに分かる程。

「コナー!」
 元気にしていた?と笑顔で名前が問えば、コナーはやや不機嫌そうに眉を寄せる。相も変わらず、コナーはすぐに顔に感情が出る。それは誰だか訝しむもの。見つめあいながら暫く二人の間に沈黙が落ちた。
 気づいてくれると思っていた名前は、コナーの不審者を見るようなじわりじわりと視線に耐えきれなかった。昔と変わってないと思うけれど分からないかなあ、と自分の独り言に悲しくなりつつも名前は名前を告げた。
「名前よ、覚えてるかしら?」
「…名前?」
 コナーは、名前、名前と名前を噛み締めるように呟き、突きつけていたトマホークをゆっくりと下ろす。名前がホッとした瞬間、背中に太い両腕が絡まっていた。予想外の出来事に目を丸くし、さらに予想以上の力強さに背骨が軋むように苦しかった。
 耳元を擽る甘いようなコナーの声にクラクラと目眩がした。(そのようなことに対して慣れていないのだ。)しかし呼び名はなぜか切なく、雨が振りだしそうな声色で。どうしたの?何故?と問いつめてしまいそうになったのを喉に押し込めた。

「…生きていたんだな」
「ヒドイ、勝手に殺さないで!」
 暫くしてコナーは名前を解放した。そして先程の空気などなかったかのように、コナーはジョークを言う。名前は頬を膨らませながら憤慨した様子を見せていたが、笑い声が漏れた。コナーも不器用な笑みを浮かべながら目を細めた。

「ところで突然どうしたんだ?」
「この間アヴリーン姉さんが、ニューヨークでコナーと会ったって言ってたわ」
「アヴリーン? あぁ、あのことか」

 名前はアヴリーンとの会話を思い出していた。あの時の驚きようといったら、表現できないほどだった。同じアサシンといえど、ニューオーリンズからニューヨークまでアヴリーンが行っているなどと思わなかった。まさかそこでコナーと出会っているなんて。世界は狭いものだなあと感じざるを得ない。アヴリーンからの影響で名前はコナーに会いに行ってしまったし、運命なのだろうか。

「アヴリーン姉さんは私の師といえる人なの。コナーについて聞いていたから、懐かしくて…つい会いたくなってしまって」
「そうか。…中に入らないか? 茶をだそう。今までのことを聞かせてくれ」
 コナーは玄関のドアを開け、ようこそと名前を迎え入れた。

0628'14