のんびりとベッドから起きた俺は、洗面所で身嗜みを整えスーツに着替える。若干スーツに着られてる感があるのは否めないが、寝ぼけ眼でいつもの執務室のドアを開ける。
視界に飛び込んでくるのは、気がつけば見慣れていただだっ広い部屋。
俺専用のでかいデスクに、その隣にある少し小さいデスク。それは俺の秘書でもあり、俺の可愛いアマートの机だ。
そこには高く積まれた書類が綺麗に置いてある。
相変わらず綺麗好きだなァと、俺が部屋を出たときは自分の汚かったデスクを見て思う。ルキーノみたいにピッカピカに変貌していた。
ドアから入って右手には、イタリア製の革張りカウチソファーがある。
このカウチソファーはふっかふかで昼寝にも最適。唯一俺が選んで買ったものでもある。ああ、金持ちって素晴らしいネ。
そのクリーム色のカウチソファーに、烏のような漆黒の艶のある黒髪が流れるように垂れている。俺の愛すべき彼女がそこに横になって、静かな寝息を立てて寝ていた。
CR:5カポとその秘書。立場は弁えているつもりだ。公私混同はしないように心掛けている。
が、最近は忙しかった所為もあり、甘い二人っきりの時間というものが無いことに気がついてしまった。
――まだ仕事の時間じゃねぇし、カポ権限で今はブレークタイムだ。
そんな自分に都合の良い言い訳を立てて、彼女の顔を覗き込む。
俺はさらさらと指通りの良い黒髪を一房掬いだし、口づけた。ふわりと甘い香りが鼻腔を擽り、俺の思考を緩やかに蕩けさせる。
彼女は仰向きで寝ているから、その可愛い寝顔は見放題で。だけど少しだけ空いているぷっくりとした口唇が目に毒だ。
ゆっくりと息を殺し、彼女を跨いでカウチソファーとの間に滑り込ませる。僅かに軋んだ音が耳に入る。
いつの間にか興奮している自分に気づいた。
寝ている間に襲う背徳感からなのか。
彼女に覆いかぶさってそのままの体勢で、彼女を真上から舐めるように見つめる。
白いブラウスのボタンは二つ外していて、胸元の開き具合が絶妙に良い。スカートはギリギリの位置でめくれ、黒タイツに包まれた太ももがあらわになっている。
唾を飲み込んで、柄にもキンチョーしている俺自身に戸惑う。
端から見ても寝込みを襲っているようなのだから、この場面を見られたらカポの威厳に関わるし、散々からかわれることだろう。この執務室のドアが叩かれないことを祈った。
心臓が早鐘を打ち鳴らすのを客観的に思いながら、ゆっくりとゆっくりと、口唇を近づける。
優しく重なった口唇はマシュマロのように優しくて、何度も啄む。
彼女の漏れる息が俺をさらに扇動させる。
エサをお預けされた犬のように、それだけじゃ我慢できなくて、軽く開いていた口に、遠慮なく舌を突っ込んでしまっていた。
彼女の眉間にシワが寄っていることに気づいてはいたがキモチヨクテ、止めることは無理な話だ。
いっそ早く目を覚ましてほしいのか、まだ夢の世界にいてほしいのか、よく分からない板挟みに悶悶と苦しんでいた。
じわりじわりと手をついていた右手が痺れてきた。あ、ヤベ―と思った時には既に遅く、右手がソファーから滑っていた。
四つん這いだった体勢はバランスを取れなくなり、右手から崩れていく。
「うぉっ!…危ネッ」
勢いは押し込めたのだが、身体は彼女に密着してしまう。
けどその衝撃で、彼女の長い睫毛が震えて、ゆっくりと開かれる真ん丸い瞳に俺が映った。寝起きで状況把握が出来ていないことがありありと分かります。
「…ジャ、ン?」
「あ、アァ。えっと、ブォンジョルノ?」
「…グッモーニン、ジャン」
俺の背中にはダラダラと冷や汗が伝う。
この状況、体勢、ナニも言い訳など出来るわけがない。
「ねぇ、この体勢ってなに?」
「いや、…ネ?あんたの寝顔が可愛くて、つい」
「つい、じゃないよ。ねぇ動けないからどいて?」
「だァめ」
俺に甘えるように言うのは、アッパーを食らわされるようなものでぐらついてしまうけどここはグッと堪える。
「まだ書類が残ってるの!早く仕事しなきゃ…」
「あんたのことだから、今日中ってヤツはもう終わっているデショ?午前中までは定休日〜」
「はぁ…?」
「今俺が決めたの」
軽いキスを頬に瞼に耳にプレゼント。
そのまま耳元に息を吹き掛ける。耳が弱いことはとうに知っているから、びくりと震えて反応する彼女が可愛かったり、する。
「オレの身の回りの世話も仕事に入ってるだろ、秘書サン?」
「〜何言ってるのもう!」
あれ、顔が真っ赤になっちゃっていますよ。
俺は顔が緩みきっているんだろうなぁと思う。ぎゅーと足を絡めて抱きしめ、充電中って感じ?
俺は頬に両手を添えて、黒い瞳をじっと見つめる。瞳の奥には欲情の色が垣間見えて、自然と口角が上がった。
「暫く、このままでもいい?」
こくりと頷くあいつに、俺は顔を首筋に埋めた。
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