びゅうと木枯らしが吹いていた。
玄関の扉を空けると名前はわあと感嘆を漏らす。雪が、朝日に照らされていてきらきらとホームステッドの一面が輝いていた。降雪も昨晩のうちに止み、外気温はそれほど寒くはない。
「ねえコナー! こんなにも、雪が積もっているわ!」
名前は階段を降りて飛び跳ね、キャッキャと騒ぐ様子はまるで子供のよう。コナーも名前の後に続いて外に出ると、太陽の眩しさに手を翳した。
「本当だな」
「雪ってあまり見たことがなかったの。わたし、ほらニューオリンズにいたでしょう?あまり降らなくて…雪を見るとテンションが上がっちゃうのよね」
昨晩までは地面の土色が顔を覗かせていたが、それも白銀に覆われている。冬が近づいているという証拠だろう。雪をあまり見たことがないという名前だが、これから嫌というほど、銀世界のホームステッドを見ていくというのに。
ダンスのステップを踏むように、名前は空を見上げながらくるくるとその場を回る。ひらひらとスカートの裾が舞う。思わずコナーは目を奪われた。「あっ!」名前が声をあげると突然は雪の中を駆け出してゆく。馬車道を通りその先の橋を渡る。いきなりどうしたのか、コナーは疑問符を浮かべながら小さな名前の足跡を辿り、ゆっくりと追いかけた。

橋を渡った先の、いくつかの居住区。コナーの目に映ったのは、ホームステッドの子どもたち数人と名前が遊んでいる姿だった。この短時間にどうやって…とコナーは考えたがすぐに打ち消した。
「お姉ちゃん、やっちゃうぞー!」
「きゃー!」
「わーっ」
名前は雪玉を作っては、軽めに子どもたちに当てている。

「名前、子どもたちと遊んでいて元気ねえ。」
「…そうだな」
「ふふっ可愛いわね」
子どもたちと名前を眺める。その少しコナーの後ろからそっとやってきたのは、名前と遊んでいるうちの一人の子供の母親だ。当然ながら顔見知りでもあった。
この閉鎖されたコミュニティの中で、親ほど年も離れず、兄や姉のように子供を構ってくれるのは貴重な存在なのだろう。思い返せば、名前は子どもたちを遊んでいることも多いように思えた。

「コナーもこっちおいでよ!」
コナーを視界に入れるときらりと目を輝かせた名前は、冷たく真っ赤になった手で雪を丸めると腕を振りかぶる。コナーの顔を狙って放った雪玉は狙い通りコナーの顔面にぶつかって落ちた。投擲がうまいだけのことはあり、命中率もさすがのように高かった。
顔の体温によりぶつかった表面の雪が水滴となってとけだす。冬の風に顔面が凍えるよう。
「…まあ!」
彼女は驚いたように口元を押さえた。

「…名前?」
「あ、コナーそんなに怒らないで、ねっ?」
後ずさる名前にコナーはゆらりと近寄る。
とその時背中にぼすっとぶつかる、雪玉。振り返れば子どもたちが雪をかき集めていた。
「もっとやれやれー!」
名前は笑いながら雪玉をコナーに当てにかかる。コナー対複数のただの雪合戦が始まったのだった。
笑い声が耐えないホームステッドの日々は、求めていたささやかな幸せなのかもしれないと、穏やかなまどろみに身を委ねた。

2015.01