圧政に苦しめられる毎日に、ゴールデン・パスの反政府軍は主にキラットを南下していた。キラット北部は王立軍の巣窟であり、我々は隅に追いやられていた。けれども偉大なるモハン・ゲールが組織したこの反政府軍は、彼亡き後も息づいているのである。
しかしながら、我々は劣勢を極めていた。皆口には出さないが、長年にも渡るこの終わりの見えない出口に、焦燥と諦観とが少しばかり渦巻いていた。
モハン・ゲールの跡を継ぐように、今のゴールデン・パスを率いているのはサバル。それと、アミータの双頭である。二人の意見は度々対立をしており、溝は深まるばかりだった。
標高が高く澄み渡る上空には、星星が輝いてる。バナプールの隅の一角で、サバルは放り出された木材の上に腰をかけていた。わたしはゆっくり近づくと声をかけた。
「サバル、」
「ああ、名前…」
サバルの、両の手で顔を覆う姿は、いつも以上に小さく見えた。最近彼は悩んでいるように、疲弊が見えて取れた。
「どうしたの」そっと隣に腰を下ろす。ゆらりとこちらを向くサバルの、透き通った翠緑の瞳の奥が哀しみに揺れていた。
「また多くを失ってしまった…。サルジェもその一人だ」
サバルの声色が震えるのを見た。
サルジェ、革命を意したその名前に聞き覚えがあった。太陽のように明るく笑う少年で、サバルによく雛のようについて回っていた。先日も屈託のない笑顔を向けていたのを、はっきりと思い出せるのに。あぁ、死んでしまったのだ。サバルが崇め讃えるモハンゲールも同様に、人の死なんてものは呆気ない。
わたしの背後を回ったサバルの腕に腰を引き寄せられる。接する部分が二人分の熱を帯びて温かい。
「名前、お前はいなくなってくれるな」
吐息混じりの熱い声はわたしの冷めた感情をどろどろと溶かしてくれる。
形式上は幼い頃に約束されたものであれ、わたしはこの人のためになんでもしたいと、愛しいと感じていた。
「ずっと、隣にいますから」
甘えるようにそっとサバルの肩に頭を預けた。
20150303