恋い慕う故に苦しくて
「おまたせ、遅くなってごめんね?」
阿部「あ、お疲れ様……!」
店員さんに連れられて個室へ入ってきた陽葵ちゃん。さっきと少しだけ印象が違うのはメイクが少し違うからか、二人きりだからか。
「何食べる?」とお品書きを見ながら、時々盗み見るように彼女を見つめる。バレてないよね。バレてたら、ちょっと恥ずいかも。
料理を頼んで、烏龍茶で乾杯。向かい合って食事するのってこんなに緊張することだっけ。
前に彼女と食事をしたのは……、小学校の給食のときか。あの時もたしか、向かい合わせに座ってたっけ。
「お仕事大変?」
阿部「へ?」
「思いつめてるように見えたから」
阿部「あ、ごめん。昔のこと、思い出してた」
「昔?」
阿部「俺たちが小学生の頃の、こと」
そう呟くと彼女はくしゃりと笑って「昔もこうしてご飯食べてたね」って話した。
阿部「あ、お、俺も! 同じこと、思い出してた……!」
「え、本当?」
阿部「本当!」
ぐんと前のめりになってしまう。でもすぐに料理が届いて、体を引いた。何やってんだろ、俺。
「ふふ、食べよっか」
阿部「あ、うん」
いただきます、と言葉が揃う。本当にあの頃みたい、と思わず顔が綻んだ。それは陽葵ちゃんも同じだったみたいで、彼女も笑ってた。
「美味しいね、亮平くん」
阿部「うん、美味しい。……あ!」
「ん?」
阿部「昔も同じこと言ってた」
「えっ?」
阿部「給食食べながら、美味しいねーって。凄く幸せそうな顔で言うから、陽葵ちゃんと食べる給食が一番好きだったなぁ」
「え、わぁ……、ちょっと恥ずかしいかも」
阿部「え、あ、ごめん! 俺、何言ってんだろ」
俺たちが同じクラスだったのは小5と小6のとき。でも小6の途中で彼女が転校していって、それからは少しだけ給食を美味しいと思えない時があって……。思えばあの頃から、陽葵ちゃんのことが好きだったなって、今更になって意識する。
「でも、私も亮平くんと給食食べるの好きだったなぁ」
烏龍茶のグラスを片手に照れくさそうに笑う彼女。
……ねえ、それってどういう意味?
喉まで出かかった言葉は烏龍茶と一緒に流し込んだ。だって、今聞いて、何も無いって言われたら、ちょっと辛いし。臆病者って笑ってほしい。
「もうすっかり大人になっちゃったね、私たち」
阿部「そうだね」
「亮平くんがジャニーズになるって教えてくれた時、凄くびっくりしたし、凄く嬉しかったんだ」
阿部「そうなの?」
「うん。ジャニーズ好きだったしね」
阿部「え!? そうだっけ!?」
「ふふ。嵐さんのファンだったんだ[D:12316]」
阿部「え!」
それは知らなかった。「誰が好きだったの?」って恐る恐る聞いたら「翔くん! ……あ、櫻井さん」って、あの頃みたいな可愛い顔を向けられた。櫻井くんかぁ……。櫻井くんかぁ……! 勝てるかな、俺。いや、アイドルと恋人に求める理想は違うって言うし……。でも、陽葵ちゃんの推しになりたいとすら思っている自分がいる。わがままだな、俺。ただの同級生でしかないのに。