でも心恋は知られたくなくて


それから少し櫻井くんの話をして、陽葵ちゃんが転校してからの話になった。陽葵ちゃんは当時から俺なんかと違って人とすぐに仲良くなるタイプだったから友達作りには困らなかったんじゃないかな……。

「友達も全然出来なくて、ちょっと寂しかったなぁ」
阿部「え、意外」
「そう?」
阿部「陽葵ちゃんって誰とでもすぐ仲良くなってた印象があったから」
「え、そんなことないよ?」

くすくすと笑いながら彼女は続けた。

「寂しくなったら、亮平くんのこと思い出してた。って、今思えばちょっと危ない子だよね」
阿部「え、そ、そんなことないけど……、なんで、俺……?」
「だって、前の学校で一番仲良かったの、亮平くんだもん。それにね、ずっと亮平くんのこと見てたから。……あ! 変な意味じゃないよ! 少クラで、見てただけ」
阿部「えっ、少クラも見てたの!?」
「うん、今も毎週録画して見てるよ」

うわ、ちょっと恥ずかしい。いや、かなり恥ずかしい。でも、素直に嬉しかった。俺の一方通行かと思ってたけど、友愛とはいえ、彼女が俺のことを思ってくれていたことに変わりはないから。

「亮平くんが頑張ってるの見てたら、私も頑張ろうって思えたの。今でもそうだよ。本当にありがとう」
阿部「……こ、こちらこそ。ありがとう、ございます」
「ふふ、なんで敬語?」
阿部「え、あ、つい」

お互い顔を見合わせて笑って、他愛もない話に花を咲かせた。それだけで単純に楽しくて、嬉しかった。

阿部「今日は遅くまでありがとう。気をつけて帰ってね」
「うん、ありがとう。久しぶりだったけど、亮平くんはずっと変わらなくて凄く安心した。それじゃあ、おやすみなさい」

先に店を出ていく彼女を視線だけで追う。本当は隣を歩いて、家まで送ってあげたかった。だけど俺にはそれができない。アイドルである前にただの男なのに、普通の恋ができないってのはあまりにも残酷で、でもそんな世界に身を置いてるのは己が決めたことなんだから、仕方ないかとため息をこぼした。

阿部「……だとしても、諦めたくないなぁ」