二人の未来を希う
約束の日はあっという間に訪れて、あっという間に過ぎ去った。ただ2人で食事をして他愛もない話をしてそれっきり。彼女を送り届けることも出来ず、告白も出来ず。「また会おうね」とは話しているものの、何回も食事にばかり誘うのもあれかなと思い始めていた。
深澤「なんか悩み事?」
隣に腰掛けたふっかが不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。「勉強のことなら分かんないけど」って軽口叩くふっかに返す気力もなくて、でも、恋愛豊富なふっかならこんな悩みもないのかなって思って、言葉を探した。
阿部「ふっかってさ、どうやって告白すんの」
深澤「え? 何? 告白?」
笑いながらそう返されるのを聞いて、言わなきゃ良かったと後悔した。
深澤「んまぁ、普通に」
阿部「その普通が出来ないから困ってんじゃん!」
深澤「何? 荒木田さん、だっけ? あのメイクさんとのこと?」
阿部「……うん、まあ」
深澤「どこまでいったの?」
阿部「どこまでって……普通に食事まで」
深澤「告白は?」
阿部「出来てない」
はぁ、と机につっ伏す俺を見てふっかは「告られんの待ってる?」なんて呟いた。そんなつもりはない。だって、向こうがどう思ってるかは分かんないから。ただの友達かもしれないし、好きって、思ってくれてるかもしれないし。分かんないけど、分かんないから俺からいかなきゃいけないって思ってる。
心の中の葛藤をふっかに吐露すれば「じゃあ次のデートが肝だね」なんて返された。
深澤「いつも飯ならたまには夜景とか見に行ったら? ……あ、でも阿部ちゃんが運転するんなら安全運転でね」
阿部「もうさすがに昔みたいなことにはなんないから!」
夜景か、そっか夜景。たしかに暗くて人の少ないところだと2人きりでもバレる可能性は日中に往来を歩くことに比べたらぐんと低くなる、はず。
深澤「いい感じのムードになったらそのまんま告っちゃえばいいじゃん」
阿部「当たり前に言うけどさ」
深澤「大丈夫だって」
ぱんと背中を叩きながらふっかはグーサインを作って見せた。よく分かんないし何の自信があってそんな風に言ってくれてるのか分かんないけど、その力強さと背中を押してくれた気持ちは有難かった。小さく頷いて「連絡してみる」と呟いてスマホへ視線を移す。「頑張れ」とひらりと手を振ってふっかが楽屋を後にして、数十分、俺は彼女と三度目のデートの約束をとりつけた。